実質的支配者とは
実質的支配者(beneficial owner、実質的所有者)とは、書類上の名義にかかわらず、法人・信託・口座を最終的に所有または支配し、その利益を実際に受けている自然人のことです。ほかの法人や名義人を何重にもはさんでも、最後にいる「人」を特定することがポイントです。マネー・ローンダリング対策の国際基準をつくるFATF(金融活動作業部会)は、勧告10・24・25で各国に実質的支配者の情報を確認し、透明にするよう求めています。
- 意味
- 最終的に所有・支配する自然人
- 対になる概念
- 名義上(法律上)の所有者
- 目的
- マネー・ローンダリング、脱税、制裁逃れの防止
- 国際基準
- FATF勧告10・24・25
名義人と実質的支配者
| 項目 | 名義上の所有者 | 実質的支配者 | |
|---|---|---|---|
| だれか | 書類に名前がのっている人や法人 | 実際にお金と決定権をもつ人 | |
| 例 | 名義株主、페이퍼컴퍼니 | ペーパーカンパニー、信託の受託者 | その背後で指示し、利益を受けとる人 |
日本のルール
犯罪収益移転防止法(犯収法)では、銀行などの特定事業者が法人と取引するときに実質的支配者を確認します。株式会社などの場合、施行規則にもとづき、おおむね次の順で判断します。
- 議決権の4分の1(25%)を超えて直接・間接にもつ自然人
- 1がいなければ、出資・融資・取引などを通じて事業活動に支配的な影響力をもつ自然人
- それもいなければ、法人を代表し業務を執行する自然人(代表取締役など)
また2022年1月からは、株式会社が作成した実質的支配者の申告書を法務局(商業登記所)が保管し、写しを交付する「実質的支配者リスト制度」が始まっています。
実質的支配者は「だれの名義か」ではなく「結局だれが得をするのか」を問う考え方です。持ち株を24%ずつに分けて何人かに名義を貸してもらっても、指示と利益がひとりに集まっているなら、その人が実質的支配者です。だから基準は数字だけでなく「事実上の支配」もあわせて見ます。
韓国・アメリカとの比較
| 国 | 制度 | 基準 |
|---|---|---|
| 日本 | 犯収法の実質的支配者 | 議決権25%超→支配的影響力→代表者 |
| 韓国 | 特定金融情報法の「実際所有者」 | 25%以上→筆頭株主など→代表者 |
| アメリカ | 企業透明法(CTA、2021年)とFinCENへの報告 | 25%以上の所有または実質的な支配 |
アメリカはCTAで会社に実質的支配者情報の報告を義務づけましたが、2025年3月の暫定最終規則で米国内の会社は報告義務の対象外とし、外国会社を中心とする制度に縮小しました。
なぜ大切なのか
実質的支配者が見えなくなると、ペーパーカンパニーを使ったマネロン、脱税、制裁逃れ、汚職資金の隠匿がしやすくなります。会社法では、支配株主の責任を問う法人格否認の法理ともつながります。
よくある質問
- 25%を超える株主がいない場合は?
- 事業活動に支配的な影響力をもつ人を確認し、それもいなければ代表者を実質的支配者とします。
- 個人の口座にも関係ありますか?
- はい。他人のために取引している疑いがあれば、個人でも確認の対象になります。
- 実質的支配者リストは義務ですか?
- 現在は株式会社が任意で利用できる制度ですが、金融機関の確認で活用されています。
参考文献
- FATF. (2023). International standards on combating money laundering and the financing of terrorism & proliferation: The FATF Recommendations (Recommendations 10, 24, 25). Paris: FATF.
- 특정 금융거래정보의 보고 및 이용 등에 관한 법률 제5조의2 및 같은 법 시행령 제10조의5. 국가법령정보센터 https://www.law.go.kr/
- Corporate Transparency Act, 31 U.S.C. § 5336 (2021); FinCEN, Beneficial Ownership Information Reporting Requirement Revision and Deadline Extension, Interim Final Rule (March 2025).
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条(実質的支配者). e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
