アインシュタインの反論から始まった
1935年、相対性理論のアインシュタインはポドルスキー、ローゼンとともに「EPR論文」を発表し、量子力学が正しければ遠く離れた2つの粒子が瞬時に影響し合うことになるので、この理論は不完全だと主張しました。彼はこれを「不気味な遠隔作用」と皮肉りました。同じ年、シュレーディンガーはこの現象に「もつれ(Verschränkung)」と名づけ、量子力学の最も本質的な特徴だと述べました。アインシュタインは、粒子が最初から決まった「隠れた変数」を持っていると信じていました。
ベルの不等式とノーベル賞
30年近く哲学論争にとどまっていたこの問題を、1964年に北アイルランドの物理学者ジョン・ベルが実験で決着をつけられる不等式に置き換えました。隠れた変数があれば2粒子の相関には上限がありますが、量子力学はその上限を超えると予測します。1972年のジョン・クラウザー、1982年のアラン・アスペ、1990年代以降のアントン・ツァイリンガーの実験はすべて量子力学に軍配を上げ、3人は2022年のノーベル物理学賞を受賞しました。2015年には抜け穴をふさいだ「ループホールフリー」なベルテストも成功しています。
誤解と応用
もつれは測定結果が相関するだけで、一方で望む結果を選んで送ることはできないため、光より速い通信は不可能です。だから相対性理論とは矛盾しません。もつれは量子コンピューターで量子ビットを結びつけて計算能力を高める資源であり、盗聴するともつれが壊れる性質を利用した量子暗号や、状態を遠くへ移す量子テレポーテーションにも使われます。2017年には中国の衛星「墨子号」が1,200km離れた地上局の間でもつれた光子を配送しました。
よくある質問
- 量子もつれで瞬間通信はできる?
- いいえ、結果を操作できないため、情報を光より速く送ることはできません。
- なぜ2022年までノーベル賞が出なかった?
- 実験の抜け穴をすべてふさぎ、結論が確実になるまで数十年かかったためです。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Einstein, A., Podolsky, B., & Rosen, N. (1935). Can quantum-mechanical description of physical reality be considered complete? Phys. Rev., 47, 777–780.
- Bell, J. S. (1964). On the Einstein Podolsky Rosen paradox. Physics, 1(3), 195–200.
- Nobel Prize in Physics 2022: Aspect, Clauser, Zeilinger. NobelPrize.org.
