家族心理教育とは
家族心理教育とは、統合失調症や双極性障害などの精神疾患のある人の家族に、病気と治療についての知識、ストレスへの対処やコミュニケーションの技能、気持ちの支えを体系的に提供する支援です。家族を病気の「原因」としてではなく、回復をともに支えるパートナーとみる点に特徴があります。1980年にアメリカ・ピッツバーグのアンダーソン、ホガティ、ライスが心理教育モデルを発表し、広まりました。日本でも病院や保健所、精神保健福祉センターなどで「家族教室」として行われています。
- 対象
- 精神疾患のある人の家族(本人が加わることも)
- 内容
- 知識、対処技能、問題解決、支え
- 根拠
- 感情表出(EE)研究
- 目標
- 再発の減少、家族の負担の軽減
感情表出(EE)研究
イギリスのブラウン、バーリー、ウィング(1972)とヴォーンとレフ(1976)は、退院した統合失調症の人に家族がどんな感情的態度を示すかを調べました。家族の感情表出(Expressed Emotion)が高い家庭に戻った人は、低い家庭に戻った人よりも再発率がはっきり高かったのです。
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 批判的コメント | 「一日中ごろごろしてばかりじゃない」 |
| 敵意 | 本人の存在そのものを否定することば |
| 情緒的巻き込まれすぎ | 過度の心配や自己犠牲、過保護 |
これは家族のせいということではなく、長い介護のストレスのなかでだれにでも起こりうる反応です。だからこそ、家族を支えることが本人を支えることにつながると考えられるようになりました。
プログラムの内容
- 病気について学ぶ:症状、薬、再発のサイン
- コミュニケーションの練習:批判ではなく、具体的にお願いする
- 問題解決の練習:生活の困りごとを一歩ずつ解決する
- 家族自身のセルフケアと、家族どうしの支えあい
「あなたのためを思って言っているのに」。愛情からの小言や心配が、かえって本人を追いつめてしまうことがあります。家族心理教育は家族を責めることなく、同じ思いを、傷つけにくい伝え方で届ける練習をいっしょにしていきます。家族も「がんばりすぎない」ことが大切です。
効果と現場
薬物療法と組みあわせることで再発や再入院を減らす、根拠のある支援として認められています。日本では2002年に「精神分裂病」が「統合失調症」に呼称変更され、偏見を減らす取り組みも進みました。偏見の問題はラベリング理論と、家族のコミュニケーションが病気を生むという初期の仮説はダブルバインド理論とあわせてご覧ください。
よくある質問
- 家族が病気の原因だという意味ですか?
- いいえ。家族を回復のパートナーとして支える考え方です。
- 感情表出が高いとはどういうことですか?
- 批判や敵意、過度の心配や自己犠牲が多い家庭の雰囲気のことです。
- 統合失調症だけが対象ですか?
- はじめは統合失調症から始まりましたが、現在は双極性障害、うつ病、摂食障害などにも広がっています。
参考文献
- Brown, G. W., Birley, J. L. T., & Wing, J. K. (1972). Influence of family life on the course of schizophrenic disorders: A replication. British Journal of Psychiatry, 121, 241–258.
- Vaughn, C. E., & Leff, J. P. (1976). The influence of family and social factors on the course of psychiatric illness. British Journal of Psychiatry, 129, 125–137.
- Anderson, C. M., Hogarty, G. E., & Reiss, D. J. (1980). Family treatment of adult schizophrenic patients: A psycho-educational approach. Schizophrenia Bulletin, 6(3), 490–505.
