共依存とは
共依存(codependency)とは、依存症や心の問題を抱える家族やパートナーなど、他者の世話や管理にのめり込むあまり、自分の感情・欲求・限界を大切にできなくなる関係のパターンです。「相手が大丈夫でなければ、私も大丈夫ではない」という状態ともいえます。
- 由来
- 1970〜80年代のアルコール依存症治療の現場(家族を「共アルコール症者」と呼んだことから)
- 代表的な著作
- サーマック(1986)、ビーティ『共依存症 いつも他人に振りまわされる人たち』(原著1986)
- 主な特徴
- 過剰な責任感、相手のコントロール、自己の軽視、断れなさ
- 注意
- DSM-5などの正式な診断名ではない
概念が生まれた背景
アルコール依存症の治療が進むにつれ、支援者たちは、配偶者や家族もまた酒を中心に生活全体が回る似た苦しみを抱えていることに気づきました。当初は「共アルコール症者(co-alcoholic)」と呼ばれ、薬物やギャンブルなどにも広がるなかで「共依存」という言葉になりました。日本でも1990年代以降、アダルトチルドレンという言葉とともに広く知られるようになりました。依存症が脳と行動を変える仕組みは依存症の神経心理を参照してください。
共依存の特徴
| 特徴 | 日常での表れ |
|---|---|
| 過剰な責任感 | 相手の機嫌、仕事、借金まで自分が何とかしなければと感じる |
| コントロール | 相手の飲酒、スマホ、予定を確かめ、変えようとし続ける |
| 自己の軽視 | 自分が何をしたいのかわからない、自分の健康は後回し |
| 断れなさ | 「いや」と言えば関係が終わるのではと怖い |
| 必要とされたい欲求 | 役に立っているときだけ自分に価値があると感じる |
| 否認 | 「そこまでひどくない」「仕事のストレスのせい」と問題を小さく見る |
イネイブリングとの関係
愛情からの行動が、かえって問題を長引かせることがあります。二日酔いの夫の代わりに会社へ「体調不良です」と電話する、ギャンブルの借金をこっそり肩代わりする、といった行動は目の前の危機を防ぎますが、本人が結果に向き合う機会を奪ってしまいます。
このような行動をイネイブリング(enabling)と呼び、共依存の人が繰り返しやすいパターンです。家族全体が一人の問題を中心にバランスをとる様子は家族システム理論でも説明されます。
セルフチェック
「はい」が多い場合は、関係のパターンを見直すきっかけにしてください(診断ツールではありません)。
- 相手の問題のために、自分の生活や健康を後回しにすることが多い。
- 相手の行動を隠したり、代わりに言い訳したりしたことがよくある。
- 自分の気持ちより先に、相手の機嫌をうかがっている。
- 頼まれごとを断ったり「いや」と言ったりするのがとても難しい。
- 相手の調子が悪いと、自分も何も手につかない。
批判と研究
共依存には研究者の間で統一された定義がなく、正式な診断名でもありません。家族の世話を担ってきた女性に病名のようなレッテルを貼るという批判もあります。マークスら(2012)は自己犠牲・対人コントロール・感情抑制の3因子からなる19項目の尺度(CCS)を作成し、ベーコンら(2020)は当事者へのインタビューから、共依存がはっきりした自己感の欠如、感情や関係の極端なアンバランス、子ども時代の親による支配と見捨てられ体験への意味づけとして語られることを報告しました。
回復のために
- 人と問題を分けて考える:相手を大切に思うことと、相手の問題を肩代わりすることは別です。
- イネイブリングを一つずつやめる:言い訳や借金の肩代わりを減らし、結果を本人に返します。
- 同じ経験をもつ人とつながる:アルコール依存症者の家族のためのアラノン(Al-Anon)、ギャンブル問題の家族会ギャマノンなどがあります。各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターでも、依存症の家族向けの相談や家族教室を行っています。
- 自分の生活を取り戻す:睡眠、運動、友人、趣味など、後回しにしてきた自分の領域を回復させます。子どもの頃の役割を繰り返していると感じる場合は、原家族をふり返るカウンセリングも役立ちます。
よくある質問
- 共依存とは簡単に言うと?
- 他人の世話や問題解決にのめり込みすぎて、自分自身の気持ちや必要を見失ってしまう関係のあり方です。
- 共依存は病気(診断名)ですか?
- いいえ。DSM-5などの正式な診断基準にはなく、主に依存症の家族支援の現場で使われてきた概念です。
- 共依存から抜け出すには?
- 相手の問題を肩代わりするイネイブリングを減らし、家族会やカウンセリングで支えを得ながら、自分の気持ちと生活を大切にする練習をすることが助けになります。
参考文献
- Cermak, T. L. (1986). Diagnosing and Treating Co-Dependence: A Guide for Professionals Who Work with Chemical Dependents, Their Spouses, and Children. Minneapolis: Johnson Institute Books.
- Beattie, M. (1986). Codependent No More: How to Stop Controlling Others and Start Caring for Yourself. Center City, MN: Hazelden.
- Marks, A. D. G., Blore, R. L., Hine, D. W., & Dear, G. E. (2012). Development and validation of a revised measure of codependency. Australian Journal of Psychology, 64(3), 119–127.
- Bacon, I., McKay, E., Reynolds, F., & McIntyre, A. (2020). The lived experience of codependency: An interpretative phenomenological analysis. International Journal of Mental Health and Addiction, 18, 754–771.
