アダルトチルドレンとは
アダルトチルドレン(AC)は、もともとアルコール依存症の親のもとで育って大人になった人(Adult Children of Alcoholics)を指す言葉です。日本では、暴力やネグレクト、激しい不和などがある機能不全家族で育ち、大人になっても生きづらさを抱える人を広く指して使われることが多くなっています。
- 由来
- 1980年代初めのアメリカの依存症臨床
- 代表的な本
- ブラック(1981)、ウォイティッツ『Adult Children of Alcoholics』(1983)
- キーワード
- 家族内の役割、「話すな・信じるな・感じるな」
- 注意
- 医学的な診断名ではなく、自己理解のための言葉
言葉が生まれた背景
カウンセラーのクラウディア・ブラックは、依存症の家庭の子どもが「話すな、信じるな、感じるな」という暗黙のルールの中で育つと指摘しました。ウォイティッツの本はアメリカでベストセラーとなり、当事者の自助グループが広がりました。日本では1990年代に精神科医の斎藤学らの紹介で広く知られるようになりました。家族全体が依存症を中心に回る様子は、共依存や家族システム論とも深く関わります。
機能不全家族で子どもが担う役割
シャロン・ウェグシャイダー(1981)は、子どもがよく担う役割を次のように整理しました。
| 役割 | 子ども時代 | 大人になってから |
|---|---|---|
| ヒーロー | 成績優秀で家族の誇りになる | 完璧主義、働きすぎ |
| スケープゴート | 問題行動で家族の注目をそらす | 怒り、反抗、危険な行動 |
| ロストチャイルド | 目立たず静かに過ごす | 孤独、親密さの回避 |
| ピエロ(マスコット) | おどけて場の緊張をほぐす | 本音を冗談で隠す |
よく言われる特徴と研究結果
誰よりしっかり者に見える人が、実はいつも不安を抱えていることがあります。親の顔色をうかがいながら家を守ってきた子どもは、大人になっても他人の気持ちばかり気にして、自分の気持ちに気づきにくくなりがちです。
自己否定、「ノー」と言えない、親密になるのが怖いといった特徴がよく挙げられます。ただしハーター(2000)の文献レビューでは、ACに共通する独特の性格があるという根拠は弱く、個人差が大きいこと、親の不和や虐待など他の家庭要因もあわせて見る必要があることが示されています。ACはレッテルではなく、自分を理解するための枠組みとして使うのがよいでしょう。
回復のためにできること
- 自分の体験に名前をつける。「うちだけがおかしかったわけではない」と知ることが出発点になります。
- 子ども時代の役割に気づく。今も職場や人間関係でヒーローやロストチャイルドを演じていないか振り返ります。原家族を見つめ直すことも役立ちます。
- 安心できる場で話す。ACの自助グループやアラノン(Al-Anon)などの家族会があり、各都道府県の精神保健福祉センターでも家族相談を受けられます。
- 専門家に相談する。不安や抑うつ、くり返す対人関係の悩みが強い場合は、カウンセリングが有効です。
よくある質問
- アダルトチルドレンとはどういう意味ですか?
- アルコール依存症などの機能不全家族で育ち、子ども時代に身につけた生き残りのための方法を大人になっても抱えている人を指す言葉です。
- アダルトチルドレンは病気ですか?
- いいえ。医学的な診断名ではなく、自分の生きづらさを理解するための考え方です。
- アダルトチルドレンの役割タイプにはどんなものがありますか?
- ヒーロー、スケープゴート、ロストチャイルド、ピエロ(マスコット)がよく知られています。
参考文献
- Black, C. (1981). It Will Never Happen to Me! Denver: M.A.C. Printing and Publications.
- Woititz, J. G. (1983). Adult Children of Alcoholics. Pompano Beach, FL: Health Communications.
- Wegscheider, S. (1981). Another Chance: Hope and Health for the Alcoholic Family. Palo Alto, CA: Science and Behavior Books.
- Harter, S. L. (2000). Psychosocial adjustment of adult children of alcoholics: A review of the recent empirical literature. Clinical Psychology Review, 20(3), 311–337.
