逆説的介入とは
逆説的介入(パラドックス介入)とは、「変わりなさい」と言われるほど抵抗する本人や家族に、あえて「今のまま続けてください」「あまり急いで変わらないでください」と指示し、従っても逆らっても変化が起きるようにする技法です。アメリカ・パロアルトのMRI(メンタル・リサーチ・インスティテュート)のワツラウィック、ウィークランド、フィッシュが1974年の『変化の原理(Change)』で理論化し、ヘイリーの戦略的家族療法やミラノ派で広く使われました。日本でもブリーフセラピーの技法として知られています。
- 前提
- 家族は変化よりも安定(ホメオスタシス)を守ろうとする
- 原理
- 抵抗を変化のてこにする
- 目標
- 第二次変化(ルールそのものの変化)
- 別名
- 治療的二重拘束
第一次変化と第二次変化
同じ解決策をもっとがんばってくり返すことを第一次変化、問題の見方やルールそのものが変わることを第二次変化とよびます。「眠ろうとすればするほど眠れない」ように、試みている解決策がかえって問題を続けさせているときに、逆説が役立ちます。
おもな技法
- 症状処方:「けんかは毎晩8時に、わざとしてみてください。」症状を自分で起こせるようになると、症状の意味が変わります。
- 抑制:「まだ変わるには早いので、ゆっくりいきましょう。」変化を急がせないことで抵抗を減らします。
- リフレーミング:問題行動に肯定的な意味づけをします(例:子どもの問題が、両親を同じ方向に向かせている)。
- ポジショニング:面接者が本人よりも悲観的な立場をとります。
「ピンクの象を絶対に思い浮かべないでください」と言われたらどうでしょう。その瞬間、ピンクの象が頭に浮かびますよね。反対に、心配ごとを「1日15分だけ、わざと心配してください」と言われると、心配が自分で扱えるものになり、力が弱まっていきます。逆説的介入は、こうした人の心のしくみを利用します。
フランクルの逆説志向
ウィーンの精神科医ヴィクトール・フランクルは1960年に逆説志向(逆説的意図)を発表しました。不眠や恐怖症のある人に、おそれていることをあえて願わせ、予期不安の悪循環を断つ個人療法の技法です。家族システムを対象とする逆説的介入とは出発点が異なりますが、原理はよく似ています。コミュニケーションの逆説という考え方はダブルバインド理論にさかのぼります。
倫理的な注意点
自傷や暴力、自殺の危険があるときは、症状処方を使ってはいけません。また相手を操作する技法だという批判もあり、現在では協力的な関係のなかで理由を説明しながら、慎重に使われています。
よくある質問
- 逆説的介入は相手をだますことですか?
- 指示そのものは真剣な課題です。ただ操作になる危険があるため、倫理的に慎重に使う必要があります。
- 使ってはいけないのはどんなときですか?
- 自傷や暴力の危険があるとき、危機的な状況のときです。
- 逆説志向と同じものですか?
- 原理は似ていますが、逆説志向はフランクルの個人療法の技法で、逆説的介入は家族システムに働きかけます。
参考文献
- Watzlawick, P., Weakland, J. H., & Fisch, R. (1974). Change: Principles of problem formation and problem resolution. W. W. Norton.
- Frankl, V. E. (1960). Paradoxical intention: A logotherapeutic technique. American Journal of Psychotherapy, 14(3), 520–535.
