ペアレンティフィケーションとは
ペアレンティフィケーション(parentification、親役割の逆転・親化)とは、子どもが年齢にふさわしくない親の役割を引きうけることをいいます。きょうだいの世話や家事・家計を担ったり、親の愚痴の聞き役や夫婦げんかの仲裁役になったりして、親と子の役割が入れかわってしまう状態です。文脈療法の創始者イヴァン・ボゾルメニイ=ナージが1973年の『見えない忠誠心(Invisible Loyalties)』で概念化し、グレゴリー・ジャーコビックが1997年の『失われた子ども時代(Lost Childhoods)』でタイプや影響を整理しました。
2つのタイプ
| タイプ | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 道具的な親化 | 身のまわりの実際の世話 | きょうだいの送り迎え、食事づくり、病気の親の介護、日本語が苦手な親の通訳 |
| 情緒的な親化 | 親の気持ちの世話 | 母親の愚痴の聞き役、両親のけんかの仲裁、父親の相談相手 |
ジャーコビックは、情緒的な親化のほうがより有害だと考えました。家事は目に見えて終わりがありますが、親の気持ちを支える役目には終わりがなく、だれにも気づかれにくいからです。
健全なお手伝いとのちがい
家のことを手伝うことがすべて親化というわけではありません。年齢にあっていて、一時的で、感謝や見返りがあり、勉強や遊び、友だちづきあいをじゃましないなら、むしろ「自分はできる」という感覚を育てます。反対に、負担が大きすぎ、長くつづき、認められず、子どもに選ぶ余地がないとき、親化になります。ボゾルメニイ=ナージはこれを、世代間の与えあいの不公平ととらえました。
「小さいころからしっかりしていたね」というほめ言葉が、傷をあらわしていることもあります。早くからしっかりした子は、じつは「しっかりするしかなかった子」なのかもしれません。日本で「長女だから」「お姉ちゃんなんだから」とがまんを重ねてきた人や、親の愚痴を聞きつづけてきた人が、大人になってこの言葉に出会い、自分の子ども時代をようやく言葉にできたと感じることも少なくありません。
大人になってからの影響
- 自分の気持ちや欲求がわからず、人の世話を優先してしまう(共依存の傾向)
- 人に頼れない、責任を抱えこみすぎる、完璧主義
- 親への怒りと罪悪感が入りまじった気持ち
- いっぽうで、共感力や責任感、ピンチへの対応力といった強みが育つこともあります。
回復とカウンセリング
カウンセリングでは、子どものころに背負ってきたものを認め、失われた子ども時代を悼み、親との間に健全な境界線を引いていく作業をします。家族全体の不公平を扱う文脈療法や原家族をふり返る作業が役に立ちます。いま家族の世話をしている10代・20代の人は、自治体のヤングケアラー相談窓口なども確認してみてください。
よくある質問
- ペアレンティフィケーションとヤングケアラーは同じですか?
- 重なる部分がありますが同じではありません。ヤングケアラーは実際に家族の世話をしている子ども・若者のことで、親化は情緒的な役割の逆転までふくむ関係の概念です。
- 長女に多いのですか?
- 長子、とくに長女に多いという報告がありますが、生まれた順番に関係なく起こりえます。
- 親化の経験はかならず有害ですか?
- いいえ。認められ、支えられていれば、責任感や共感力といった強みとして残ることもあります。
参考文献
- Boszormenyi-Nagy, I., & Spark, G. M. (1973). Invisible loyalties: Reciprocity in intergenerational family therapy. New York: Harper & Row.
- Jurkovic, G. J. (1997). Lost childhoods: The plight of the parentified child. New York: Brunner/Mazel.
- Hooper, L. M. (2007). The application of attachment theory and family systems theory to the phenomena of parentification. The Family Journal, 15(3), 217–223.
