機能不全家族とは
機能不全家族とは、依存症、暴力、ネグレクト、精神疾患、慢性的な不和などのために、家族が子どもの安全や気持ちの欲求を満たせなくなり、その問題をかくすためのかたいルールや役割が固まってしまった家族のことです。完璧な家族はないので、「けんかのある家族」とは区別されます。問題がくり返され、そのことを口にできず、子どもが大人の役割を背負うといったパターンが長く続くときに、機能不全とよばれます。1980年前後にアメリカでアルコール依存症の家族を研究したクラウディア・ブラックやシャロン・ウェグシャイダー=クルーズの仕事によって広く知られるようになり、日本でも1990年代に「アダルトチルドレン」という言葉とともに広まりました。
- 背景
- 依存症、暴力、ネグレクト、病気、慢性的な不和など
- ルール
- 話すな、信じるな、感じるな
- 役割
- ヒーロー、スケープゴート、ロストチャイルド、ピエロ
- その後
- アダルトチルドレン、世代間連鎖
3つのルール
ブラック(1981)は、アルコール依存症の家庭で育つ子どもたちが「話すな(Don't talk)、信じるな(Don't trust)、感じるな(Don't feel)」という暗黙のルールを身につけると述べました。家のことは外で話してはいけない、大人の約束は信じられない、気持ちは出さないほうが安全だ、というものです。
家族の役割
| 役割 | 見た目 | 心のなか |
|---|---|---|
| イネイブラー | 依存症の人をかばい、あと始末をする | 疲れきっている |
| ヒーロー | 成績や成果で家の誇りになる | 足りないという不安 |
| スケープゴート | 問題を起こして注目を集める | 傷つきと怒り |
| ロストチャイルド | 静かで目立たない | さびしさ |
| ピエロ(マスコット) | おどけて場をなごませる | おそれ |
ウェグシャイダー=クルーズ(1981)がまとめたこれらの役割は、家族の緊張をなんとか持ちこたえさせますが、子ども自身の欲求はあと回しにされてしまいます。
家のなかで、いちばん大事なルールが「何もないふりをすること」だったという人はいませんか。そのルールは、子どものころは生きのびるための知恵でした。けれど大人になってからは、気持ちを言葉にできない、人の世話をやきすぎる、いつも気をはっている、といった「生きづらさ」として残ることがあります。こうした人たちを表すために、アダルトチルドレン(Adult Children of Alcoholics)という言葉が生まれました。
どんな影響が残るのか
機能不全家族での経験は逆境的小児期体験(ACE)と重なり、大人になってからの共依存や人間関係の不安、うつなどとかかわります。家族がひとつのシステムとしてバランスを守ろうとする性質は、家族システム論から理解できます。
回復への道すじ
- 家族のルールと、自分がになってきた役割に気づく
- 安全な場所で、気持ちを言葉にしてみる
- 自助グループ(ACA、アラノンなど)やカウンセリングを利用する
- 育った家族を責めるよりも理解し、連鎖をとめる選択をする
世代をこえた貸し借りや忠誠心については文脈療法で扱われています。
よくある質問
- けんかのある家族はすべて機能不全家族ですか?
- いいえ。問題を口にして話しあえるなら、健康な家族です。問題をかくすかたいパターンが長く続くときに機能不全とよびます。
- 役割はひとり1つだけですか?
- いいえ。時期やきょうだいの数によって変わったり、重なったりします。
- アダルトチルドレンは病名ですか?
- いいえ。自分を理解するための考え方で、正式な診断名ではありません。
参考文献
- Black, C. (1981). It will never happen to me! M.A.C. Printing and Publications.
- Wegscheider-Cruse, S. (1981). Another chance: Hope and health for the alcoholic family. Science and Behavior Books.
