逆境的小児期体験(ACE)とは
逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experiences:ACE)とは、18歳になるまでに経験した虐待と家庭の機能不全のことです。「小児期逆境体験」と訳されることもあります。アメリカの医療機関カイザー・パーマネンテのヴィンセント・フェリッティと、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のロバート・アンダらが1998年に発表したACE研究によって広く知られるようになりました。
- 意味
- 18歳までに経験した虐待と家庭の機能不全
- 代表的な研究
- フェリッティら(1998)のACE研究
- 主な発見
- 経験したカテゴリーが多いほど、大人になってからの健康リスクが段階的に高まる
- あわせて知りたい概念
- 保護因子、レジリエンス、心的外傷後成長
ACE研究でわかったこと
研究チームは健康診断を受けた大人に質問紙を送り、9,508人が回答しました。子どものころの経験は、7つのカテゴリーに分けてたずねられました。
| 区分 | カテゴリー |
|---|---|
| 虐待 | 心理的虐待、身体的虐待、性的虐待 |
| 家庭の機能不全 | アルコールや薬物の問題がある家族、精神疾患や自殺の危険がある家族、母親が暴力を受けていた、服役した家族がいる |
子どものころの経験は、本当に大人になってからの健康と関係があるのでしょうか。ACE研究では、経験したカテゴリーの数と大人になってからの健康リスクとのあいだに、段階的な関係が見られました。4つ以上のカテゴリーを経験した人は、ひとつも経験していない人とくらべて、アルコール依存、薬物乱用、うつ、自殺未遂のリスクが4〜12倍高くなっていました。
その後の研究やCDCの調査ではネグレクトなどが加えられ、現在は10項目のACEスコアがよく使われています。
ACEスコアを見るときの注意点
- ACEスコアは、集団としてのリスクの傾向をあらわす指標です。スコアが高いからといって、その人の将来が決まるわけではありません。
- 経験の強さや時期、続いた期間、いじめや貧困のようにリストにない困難は、スコアには反映されません。
- 大人になってから記憶をたよりに答えるという方法上の限界もあります。
回復を支える保護因子
つらい経験があっても、信頼できる大人ひとりとの安定した関係、安心できる学校や地域、気持ちをことばにして助けを求める力は、回復を支える保護因子とされています。家族のなかの会話や柔軟さがなぜ大切かはオルソンの円環モデルや家族システム理論、子育てのスタイルのちがいはバウムリンドの養育スタイル、困難のあとの成長の可能性は心的外傷後成長もあわせてご覧ください。
日本の法律と相談窓口
日本では、2020年4月に施行された改正児童虐待防止法などで、親による体罰の禁止が法律に明記されました。さらに2022年12月には、民法の懲戒権の規定(第822条)が削除され、子の人格を尊重し、体罰など心身の健全な発達に有害な言動をしてはならないという規定が設けられました。虐待かもしれないと感じたら、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」に電話すると、最寄りの児童相談所につながります。
よくある質問
- 逆境的小児期体験(ACE)とは?
- 18歳までに経験した虐待(心理的・身体的・性的)と、家庭の機能不全(依存症、精神疾患、家庭内暴力、服役など)のことです。
- ACE研究でわかったことは?
- 経験したカテゴリーが多いほど大人になってからの健康リスクが高く、4つ以上ではアルコール依存、薬物乱用、うつ、自殺未遂のリスクが4〜12倍でした。
- ACEスコアが高いと必ず問題が起きますか?
- いいえ。集団としてのリスクの傾向を示す指標にすぎず、安定した人間関係などの保護因子が回復を支えます。
参考文献
- Felitti, V. J., Anda, R. F., Nordenberg, D., Williamson, D. F., Spitz, A. M., Edwards, V., Koss, M. P., & Marks, J. S. (1998). Relationship of childhood abuse and household dysfunction to many of the leading causes of death in adults: The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study. American Journal of Preventive Medicine, 14(4), 245–258.
