レジリエンスとは
レジリエンス(resilience)は、もともと物体が押されたあと元の形に戻る性質を指す言葉です。心理学では、深刻な逆境やリスクの中でもうまく適応したり、困難のあとで回復したりする力とその過程を意味します。日本では「回復力」「精神的回復力」とも訳され、学校や企業の研修でもよく使われます。
- 意味
- 逆境の中での適応と回復
- 代表的な研究
- カウアイ島縦断研究(エミー・ワーナー)
- 重要な考え方
- 特別な力ではなく「ふつうの魔法」(アン・マステン)
- 構成
- 個人・家族・地域の保護要因
カウアイ島研究
厳しい環境で育った子どもが、みな問題を抱えたわけではありませんでした。アメリカの心理学者エミー・ワーナーは、1955年にハワイのカウアイ島で生まれた子ども約700人を40年近く追跡しました。貧困、親の精神疾患や不和など複数のリスクを抱えた子どものうち、約3分の1は思春期や成人期にすこやかに育っていました。
この子どもたちには共通点がありました。自分を信じてくれる大人が少なくとも1人いて、困難に自分から取り組もうとする姿勢があったのです。また、はじめはつまずいた人の多くも、30〜40代までに立ち直っていました。
ふつうの魔法
アン・マステン(2001)は、レジリエンスは特別な子どもだけがもつ並外れた力ではなく、だれにでもある基本的な適応のしくみ(人間関係、脳の発達、自己制御、問題解決)がきちんと働くときに現れる「ふつうの魔法」だと述べました。こうしたしくみを守れば、多くの子どもが回復できるのです。
レジリエンスを支える保護要因
| レベル | 保護要因 | |
|---|---|---|
| 個人 | 自己制御、問題解決力、楽観性、자기효능감 | 自己効力感 |
| 家族 | 温かく安定した養育者との関係、一貫したルール | |
| 学校・地域 | 支えてくれる先生やメンター、友だち、安全な地域、地域活動 |
幼いころに築かれた安定した愛着は、生涯にわたる保護要因になります。愛着理論も参考にしてください。
レジリエンスを高める方法
- つながりを保つ。つらいときに頼れる人が1人いるだけで大きく違います。
- コントロールできることに集中する。小さな目標を立てて達成する経験を重ねます。
- 考え方をとらえ直す。「もう終わりだ」ではなく「今は大変な状況だ」と言いかえます。
- 体を整える。睡眠、運動、食事はストレス対処の土台です。
- 助けを求める。助けを求めることもレジリエンスの一部です。
よくある誤解
- 「レジリエンスは生まれつき」→人間関係や環境で育てられます。
- 「レジリエンスが高い人はつらさを感じない」→苦しみを感じながらも立ち直ることです。
- 「本人が頑張ればいい」→貧困や暴力などの環境を改善せずに、個人にだけ回復を求めてはいけません。
大きな苦しみのあとで、かえって人生の意味が深まる体験は心的外傷後成長で扱っています。
よくある質問
- レジリエンスとは?
- 大きな困難や逆境を経験したあとでも、ふたたび適応し日常を取り戻す力とその過程のことです。
- レジリエンスは生まれつきですか?
- 気質の影響もありますが、支えてくれる人間関係や安全な環境、問題解決の経験などを通して十分に育てることができます。
- レジリエンスを高めるいちばん大切な要因は?
- 多くの研究で共通して挙げられるのは、信じて支えてくれる大人や人との安定した関係です。
参考文献
- Werner, E. E. (1993). Risk, resilience, and recovery: Perspectives from the Kauai Longitudinal Study. Development and Psychopathology, 5(4), 503–515.
- Masten, A. S. (2001). Ordinary magic: Resilience processes in development. American Psychologist, 56(3), 227–238.
