暴力のサイクルとは
暴力のサイクルとは、DV(ドメスティック・バイオレンス)は一度きりのできごとではなく、「緊張がたまる→暴力が爆発する→謝ってやさしくなる」という3つの段階をくり返し、くり返すほど周期が短く、暴力が激しくなりやすいという考え方です。アメリカの心理学者レノア・ウォーカーが被害女性への聞きとりをもとに、1979年の著書『バタードウーマン(The Battered Woman)』で示しました。
- 第1段階
- 緊張期(ささいなことで責める、不機嫌)
- 第2段階
- 爆発期(暴力)
- 第3段階
- ハネムーン期(謝罪、プレゼント、約束)
- 傾向
- くり返すほど周期が短く、暴力が激しく
3つの段階
| 段階 | 加害者 | 被害者 |
|---|---|---|
| 緊張期 | イライラ、非難、束縛 | 顔色をうかがい、合わせる |
| 爆発期 | 身体的・精神的・性的暴力 | 恐怖、けが |
| ハネムーン期 | 謝罪、「もう二度としない」 | 期待、許し |
ハネムーン期のやさしさが「今度こそ変わってくれる」という期待を生むため、関係から離れにくくなります。
「ふだんは本当にやさしい人なんです」。DVの相談でよく聞かれる言葉です。暴力のあとの心からの謝罪ややさしさは、うそではないのかもしれません。それでも、それはサイクルのひとつの段階です。サイクルに気づくことが、抜けだすための第一歩になります。
なぜ離れられないのか
ウォーカーは、くり返される暴力のなかで「何をしてもむだだ」という学習性無力感が生まれると説明しました。経済的な依存、子どものこと、仕返しへの不安、まわりからの「あなたにも原因がある」という声も、離れることをむずかしくします。また、被害者が別れようとするときに危険が高まることがあるため、安全計画が大切です。
世代間連鎖
キャシー・ウィドム(1989)は『サイエンス』の論文「暴力のサイクル」で、子どものころに虐待やネグレクトを受けた人は、比較群よりも少年期・成人期に暴力犯罪で逮捕される割合が高いと報告しました。ただし、大多数は暴力をくり返していないことも強調しています。逆境的小児期体験(ACE)や機能不全家族ともつながるテーマです。
日本の法律と相談先
日本では2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」が成立しました。2023年の改正(2024年4月施行)で、身体への暴力や生命・身体への脅迫だけでなく、自由・名誉・財産に対する脅迫(「外出しようとすると怒鳴る」など)を受けた場合も、心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときは接近禁止命令などを申し立てられるようになりました。相談は全国共通の「DV相談ナビ」(#8008)や「DV相談+(プラス)」で受けられます。緊急のときは110番です。
限界
すべてのDVが3段階をたどるわけではなく、ハネムーン期のないまま支配が続くことも多いという批判があります。そのため現在は、身体的な暴力だけでなく、日常的な束縛や支配(モラハラ、強圧的支配)にも目が向けられています。
よくある質問
- ハネムーン期とは何ですか?
- 暴力のあと、加害者が謝ってやさしくなり、「もう二度としない」と約束する時期です。
- 虐待を受けた子どもは必ず加害者になりますか?
- いいえ。リスクは高まりますが、大多数はくり返しません。
- デートDVにもあてはまりますか?
- はい。恋人どうしでも同じサイクルがよく見られます。
参考文献
- Walker, L. E. (1979). The battered woman. Harper & Row.
- Widom, C. S. (1989). The cycle of violence. Science, 244(4901), 160–166.
- 가정폭력범죄의 처벌 등에 관한 특례법 (1997. 12. 13. 제정, 1998. 7. 1. 시행).
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)、令和5年改正(2024年4月1日施行).
- 中华人民共和国反家庭暴力法(2015年12月27日通过,2016年3月1日起施行).
