毒親とは
毒親とは、子どもの自尊心や自立を長期にわたって傷つけ続ける親を指す言葉です。アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードの『Toxic Parents』(1989)が『毒になる親』として邦訳されたことをきっかけに広まり、2010年代以降は書籍やドラマ、SNSでよく使われるようになりました。大切なのは、一度の失敗ではなくくり返されるパターンだという点です。
- 由来
- スーザン・フォワード『毒になる親』(原著1989年)
- 位置づけ
- 一般的な言葉(学術用語・診断名ではない)
- 核心
- 子どもの自尊心と自立をくり返し損なう養育のあり方
- 関連研究
- 逆境的小児期体験(ACE)研究
毒親のタイプ
フォワードの分類をもとに整理すると、次のようになります。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 過干渉・支配型 | 進路や交際、服装まで決め、従わないと罪悪感を与える |
| 否定・批判型 | 「あなたはダメね」と人格を否定する言葉をくり返す |
| ネグレクト型 | 親の役割を果たさず、子どもが親の世話をする |
| 依存症型 | 飲酒やギャンブルで家庭が不安定になる |
| 暴力型 | 身体的・言葉の暴力を「しつけ」と正当化する |
日本では、成績や受験を過度に求める教育虐待も毒親の問題として語られることが多くあります。
子どもへの影響
「あなたのためを思って」という言葉が、深い傷になることがあります。愛情の名のもとにくり返された支配や否定は、大人になった子どもが自分の判断を信じられず、いつも誰かの許しを求めてしまう原因になりえます。
フェリッティら(1998)の逆境的小児期体験(ACE)研究では、虐待やネグレクト、家庭の機能不全を多く経験した人ほど、成人後のうつ、依存症、慢性疾患のリスクが高いことが示されました。ガーショフとグローガン=ケイラー(2016)のメタ分析でも、体罰は攻撃性や心の問題など好ましくない結果と関連し、よい効果は確認されませんでした。親との関係がその後の人間関係に与える影響は愛着理論やアダルトチルドレンでも解説しています。
日本の法改正
2020年4月施行の改正児童虐待防止法で、親による体罰の禁止が明記されました。さらに2022年12月の民法改正で、親の懲戒権の規定が削除されました。虐待が疑われる場合は、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」に連絡できます。
大人になった子どもの向き合い方
- 体験を認める。「自分が気にしすぎなのかも」ではなく「あれは自分にとってつらかった」と認めることから始めます。
- 境界線を引く。連絡の頻度、話題、お金のことなど、自分が守りたい線を決めて短くはっきり伝えます。
- 距離を置いてもいい。関係を続けるか、減らすかは大人である自分が選べます。
- 支えを得る。カウンセリングや原家族の振り返りを通して、親の声と自分の声を分けていきます。
よくある質問
- 毒親とはどういう意味ですか?
- 子どもに長期的に悪影響を与え続ける親を指す言葉で、スーザン・フォワードの『毒になる親』に由来します。
- 毒親は医学用語ですか?
- いいえ。学術用語や診断名ではなく、有害な親子関係を表す一般的な言葉です。
- 毒親と距離を置くのは悪いことですか?
- いいえ。大人になった子どもは、自分を守るために親との距離や関わり方を自分で決めることができます。
参考文献
- Forward, S., & Buck, C. (1989). Toxic Parents: Overcoming Their Hurtful Legacy and Reclaiming Your Life. New York: Bantam Books.
- Felitti, V. J., Anda, R. F., Nordenberg, D., Williamson, D. F., Spitz, A. M., Edwards, V., Koss, M. P., & Marks, J. S. (1998). Relationship of childhood abuse and household dysfunction to many of the leading causes of death in adults: The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study. American Journal of Preventive Medicine, 14(4), 245–258.
- Gershoff, E. T., & Grogan-Kaylor, A. (2016). Spanking and child outcomes: Old controversies and new meta-analyses. Journal of Family Psychology, 30(4), 453–469.
- 「아동복지법」 제17조(금지행위) 및 「민법」 제915조(징계권) 삭제(2021. 1. 26.). 국가법령정보센터.
