執行猶予とは
執行猶予とは、裁判所が有罪を認めて刑を言い渡しつつ、その執行を1年以上5年以下の期間猶予する制度です。猶予期間を取り消されることなく過ごせば、刑の言渡しは効力を失います(刑法第27条)。短期の実刑はかえって刑務所内で犯罪を学ばせたり社会とのつながりを断ったりして再犯を招きかねない、という反省から生まれた代表的な社会内処遇です。
- 根拠
- 刑法第25条
- 対象
- 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 猶予期間
- 裁判確定日から1年以上5年以下
- 付随する処分
- 保護観察(第25条の2)
要件
刑法第25条第1項によると、次の者が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき、情状により執行を猶予できます。
- 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
- 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
なお、2025年6月から懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。また、執行猶予中の者でも、2年以下の拘禁刑で情状に特に酌量すべきものがあるときは、再度の執行猶予が認められる場合があります(第25条第2項)。
取消しと猶予期間経過の効果
執行猶予中にまた罪を犯したらどうなるのでしょうか。猶予期間内にさらに罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑に執行猶予がつかないときは、執行猶予は必ず取り消されます(必要的取消し、第26条)。罰金に処せられたときや、保護観察の遵守事項に違反し情状が重いときは、取り消されることがあります(裁量的取消し、第26条の2)。取り消されると、猶予されていた刑もあわせて執行されます。
猶予期間は裁判が確定した日から進行します。また、2016年からは刑の一部だけを猶予する一部執行猶予(第27条の2)も導入されています。
韓国と中国の制度
| 項目 | 日本 | 韓国 | 中国 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 刑法第25条 | 刑法第62条 | 刑法第72条〜第77条(緩刑) |
| 対象 | 3年以下の拘禁刑、50万円以下の罰金 | 3年以下の懲役・禁錮、500万ウォン以下の罰金 | 拘役、3年以下の有期懲役 |
| 期間 | 1〜5年 | 1〜5年 | 拘役は2か月〜1年、有期懲役は1〜5年(いずれも原判決の刑期以上) |
韓国には、刑の言渡し自体を猶予し、2年たつと免訴とみなす宣告猶予(刑法第59条・第60条)もあります。中国では、18歳未満の者、妊娠中の女性、75歳以上の者は要件を満たせば必ず緩刑を言い渡すとされ、累犯者には適用されません。
仮釈放との違いは仮釈放、刑罰の目的については刑罰理論を参考にしてください。
よくある質問
- 執行猶予とは?
- 刑を言い渡しつつ1年以上5年以下の期間その執行を猶予し、取り消されずに期間を過ごせば刑の言渡しの効力を失わせる制度です。
- 執行猶予がつく条件は?
- 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金であること、前に拘禁刑以上の刑に処せられていないか執行終了から5年以上たっていること、そして情状が認められることです。
- 執行猶予がついても前科になりますか?
- はい。執行猶予も有罪判決であるため前科となります。猶予期間を無事に経過すると刑の言渡しは効力を失います。
参考文献
- 「형법」 제59조~제65조 (국가법령정보센터, law.go.kr).
- 刑法(明治40年法律第45号)第25条~第27条 (e-Gov法令検索).
- 《中华人民共和国刑法》第七十二条至第七十七条.
