シンボリック相互作用論とは
シンボリック相互作用論(象徴的相互作用論)とは、人びとがことば、身ぶり、表情などのシンボルをやりとりする相互作用のなかで意味をつくりだし、その意味にもとづいて行為すると考える社会学の理論です。社会を巨大な構造としてではなく、日常の会話や出会いの積み重ねによってつくられていく過程としてとらえます。シカゴ大学のジョージ・ハーバート・ミードの思想を出発点とし、弟子のハーバート・ブルーマーが1937年にこの名前をつけました。
📌 ひと目でわかる
- 源流
- G. H. ミード
- 命名
- H. ブルーマー(1937年)
- 分析のレベル
- ミクロ社会学
- キーワード
- シンボル、意味、解釈
ブルーマーの3つの前提
- 人間は、ものごとが自分にとってもつ意味にもとづいて行為する。
- その意味は、他者との社会的相互作用から生まれる。
- 意味は、人が状況に向き合うなかでの解釈の過程によって扱われ、修正される。
たとえば、同じ「お辞儀」でも、日本では挨拶や感謝、謝罪などさまざまな意味をもち、角度や長さによって受けとられ方が変わります。その意味は生まれつきではなく、相互作用のなかで学び、解釈されたものです。
おもな概念
| 概念 | 論者 | 内容 |
|---|---|---|
| 鏡に映った自己 | クーリー(1902年) | 他者が自分をどう見ているかを想像して自己像をつくる |
| 主我(I)と客我(me) | ミード | 自発的・創造的な自分と、他者の期待をとりこんだ自分 |
| 重要な他者・一般化された他者 | ミード | 親など特定の人の期待から、社会全体の期待へと広がる |
| 状況の定義(トマスの公理) | トマス(1928年) | 人が状況を現実と定義すれば、その結果も現実となる |
| ドラマツルギー | ゴフマン(1959年) | 日常は舞台であり、人は印象を操作する演者である |
機能主義・葛藤理論との比較
| 項目 | 機能主義 | 葛藤理論 | シンボリック相互作用論 |
|---|---|---|---|
| レベル | マクロ | マクロ | ミクロ |
| 社会の見方 | 各部分が調和するシステム | 集団間の対立と支配 | 相互作用でつくられる意味 |
| 問い | この制度はどんな機能を果たすか | 誰が得をしているか | 人びとはこの状況をどう解釈しているか |
シンボリック相互作用論は、犯罪社会学のラベリング理論へとつながりました。ベッカー(1963年)は、逸脱とは行為そのものの性質ではなく、周囲がその行為に「逸脱」というラベルを貼った結果だと考えました。一度「問題児」と見なされた生徒が、その期待どおりにふるまうようになっていく過程は、その典型例です。
意義と限界
日常生活や個人の主体性をこまやかに説明し、質的調査の方法を発展させた点が評価されます。一方で、階級や権力、制度といったマクロな構造の影響を軽く見ていると批判されます。
よくある質問
- 鏡に映った自己(鏡映的自己)は誰の概念ですか?
- チャールズ・ホートン・クーリーが1902年に提唱しました。
- 社会学の三大視点のうち、ミクロな視点は?
- シンボリック相互作用論です。機能主義と葛藤理論はマクロな視点です。詳しくは社会学理論を参照してください。
参考文献
- Mead, G. H. (1934). Mind, Self, and Society. University of Chicago Press.
- Blumer, H. (1969). Symbolic Interactionism: Perspective and Method. Prentice-Hall.
- Cooley, C. H. (1902). Human Nature and the Social Order. Charles Scribner’s Sons.
- Thomas, W. I., & Thomas, D. S. (1928). The Child in America. Alfred A. Knopf.
- Goffman, E. (1959). The Presentation of Self in Everyday Life. Doubleday.
- Becker, H. S. (1963). Outsiders. Free Press.
