自己知覚理論とは
自己知覚理論(self-perception theory)とは、自分の態度や気持ちがはっきりしないとき、人はまるで他人を観察するように、自分の行動とその行動が起きた状況を見て、自分の態度を推しはかるという理論です。社会心理学者のダリル・ベムが1960年代後半に提案し、1972年に『Advances in Experimental Social Psychology』で体系的にまとめました。
- 意味
- 自分の行動を見て、自分の態度を推しはかるという理論
- 提唱者
- ダリル・ベム(1967年提案、1972年に体系化)
- あてはまりやすい場面
- 自分の内面の手がかりが弱い、あいまいなとき
- 関連する現象
- アンダーマイニング効果、フット・イン・ザ・ドア
理論のポイント
「自分はコーヒーが好きなのかな?」とすぐに答えられないとき、「毎朝コーヒーを買っているんだから、たぶん好きなんだろう」と考えるようなことです。ベムは、私たちが他人の態度をその人の行動から推しはかるのと同じやり方で、自分自身についても推論していると考えました。
認知的不協和理論とのちがい
| 項目 | 認知的不協和理論 | 自己知覚理論 |
|---|---|---|
| 説明 | 態度と行動が食いちがうと不快になり、態度を変える | 不快感がなくても、行動を見て態度を推しはかる |
| 中心となる過程 | 心理的な緊張の解消 | 自己観察と推論 |
| あてはまりやすい場面 | 態度がはっきりしていて、大きく食いちがうとき | 態度があいまい、または弱いとき |
ベムは、フェスティンガーの有名な「1ドルと20ドル」の実験結果も、不快感をもちださずに自己知覚だけで説明できると主張しました。現在では、ふたつの理論はそれぞれ別の条件でよくあてはまる、と考えられることが多くなっています。
アンダーマイニング効果(過剰正当化効果)
好きでやっていたことにごほうびをあげると、なぜかえってやる気が下がるのでしょうか。レッパー、グリーン、ニスベット(1973)の実験では、もともとお絵かきが好きだった幼稚園児のうち、ごほうびの約束をされて絵を描いた子どもたちは、そのあとの自由時間に絵を描く時間が減りました。自己知覚理論から見ると、子どもたちが「ごほうびのために描いたんだ」と自分の行動を解釈したことで、内側からの興味が弱まったと考えられます。
日本では、この現象は「アンダーマイニング効果」という名前で、子育てや教育の場面でもよく紹介されています。
日常での活かし方
- 小さな行動から:小さなお願いを引き受けると「自分は人を助ける人間だ」と知覚し、大きなお願いも引き受けやすくなります(フット・イン・ザ・ドア)。
- 習慣づくり:1日10分でも勉強を続けると、「自分は勉強する人だ」という自己イメージが育ちます。
- ごほうびは慎重に:もともと好きなことに、条件つきのごほうびを出しすぎないほうがよいでしょう。
自分の行動の原因をどう解釈するかは、基本的な帰属の誤りや、失敗にそなえて言い訳を用意するセルフ・ハンディキャッピングともつながっています。
よくある質問
- 自己知覚理論とは?
- 態度がはっきりしないとき、自分の行動と状況を見て自分の態度を推しはかる、というダリル・ベムの理論です。
- 認知的不協和理論とのちがいは?
- 認知的不協和理論は不快感をへらすために態度を変えると考え、自己知覚理論は不快感がなくても行動を観察して態度を推論すると考えます。
- アンダーマイニング効果とは?
- もともと楽しんでいた活動に外からのごほうびをあたえると、その活動への内発的な興味が下がってしまう現象です。
参考文献
- Bem, D. J. (1972). Self-perception theory. In L. Berkowitz (Ed.), Advances in Experimental Social Psychology (Vol. 6, pp. 1–62). Academic Press.
- Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the "overjustification" hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129–137.
