ハーズバーグの二要因理論とは
ハーズバーグの二要因理論(two-factor theory)とは、仕事で満足をもたらす要因と、不満足をもたらす要因は、それぞれ別のものであると考える動機づけ理論です。動機づけ・衛生理論(motivation-hygiene theory)とも呼ばれます。アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが、バーナード・モスナー、バーバラ・スナイダーマンとともに、1959年の『The Motivation to Work』で示しました。
- 意味
- 満足を高める要因と、不満足を防ぐ要因は別ものという理論
- 提唱者
- フレデリック・ハーズバーグ(1959)
- 2つの要因
- 動機づけ要因(満足要因)、衛生要因(不満足要因)
- 実践
- 職務充実(ジョブ・エンリッチメント)
ピッツバーグでの研究
ハーズバーグらは、アメリカ・ピッツバーグ周辺のエンジニアと会計士およそ200人に、「仕事でとくによかったとき」と「とくにいやだったとき」を語ってもらう臨界事象法(クリティカル・インシデント法)で面接をおこないました。よかった出来事にはおもに仕事そのものにかかわる要因が、いやだった出来事にはおもに仕事をとりまく環境の要因があらわれました。
| 区分 | 例 | はたらき |
|---|---|---|
| 動機づけ要因 | 達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長 | あると満足ややる気が高まる |
| 衛生要因 | 会社の方針、監督、人間関係、労働条件、給与、雇用の安定 | 欠けると不満が生じるが、満たしても満足にまではつながらない |
満足と不満足は反対語ではない
給料を上げれば、社員はずっとやる気をもって働いてくれるのでしょうか。ハーズバーグは、満足の反対は不満足ではなく「満足がない」状態であり、不満足の反対は「不満足がない」状態だと考えました。給与や職場環境のような衛生要因を改善すれば不満はへりますが、それだけでやる気が長続きするわけではありません。やる気を高めるには、達成感や承認、責任のように、仕事そのものから生まれる動機づけ要因が必要だと主張したのです。
「衛生要因」という名前は、衛生管理が病気を防いでも健康を積極的につくるわけではない、というたとえに由来します。ハーズバーグは1968年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の論文で、仕事の量をふやすだけでなく責任や裁量を広げる職務充実を提案しました。
マズローの欲求段階説とのくらべ
| マズローの欲求段階説 | ハーズバーグの二要因 |
|---|---|
| 生理的・安全・所属の欲求 | おおむね衛生要因と対応 |
| 承認・自己実現の欲求 | おおむね動機づけ要因と対応 |
日本の職場にあてはめると
2019年4月から順次施行された働き方改革関連法による長時間労働の是正や、賃上げは、衛生要因を整えて不満をへらすうえで大切です。ただ、社員の主体的な意欲を引き出すには、やりがいのある仕事、フィードバックと承認、成長の機会といった動機づけ要因もあわせて設計する必要があります。失敗を口にできる職場の雰囲気である心理的安全性、接客の仕事の感情労働、報酬と人間関係を交換としてとらえる社会的交換理論もあわせてご覧ください。
批判
よいことは自分のおかげ、悪いことは環境のせいにしがちな回答のかたよりが結果に影響したのでは、という方法上の批判があります。また、人によっては給与が動機づけ要因としてはたらくこともある、という指摘もあります。
よくある質問
- ハーズバーグの二要因理論とは?
- 仕事の満足を高める動機づけ要因と、不満足を防ぐ衛生要因は別ものだと考える理論です。
- 動機づけ要因と衛生要因の例は?
- 動機づけ要因は達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長。衛生要因は会社の方針、監督、人間関係、労働条件、給与、雇用の安定です。
- 給料を上げてもやる気は出ないのですか?
- ハーズバーグによれば、給料を上げると不満はへりますが、それだけで長続きするやる気を生むのはむずかしいとされます。
参考文献
- Herzberg, F., Mausner, B., & Snyderman, B. B. (1959). The motivation to work. John Wiley & Sons.
- Herzberg, F. (1968). One more time: How do you motivate employees? Harvard Business Review, 46(1), 53–62.
