セルフ・ハンディキャッピングとは
セルフ・ハンディキャッピング(self-handicapping)とは、評価される場面の前に、成功を妨げる不利な条件を自分でつくったり、主張したりする行動です。大事な試験の前夜にゲームで夜更かしをする、発表の準備をわざと後回しにする、といった例が典型です。こうしておけば、失敗しても「準備しなかったから」と言えるので能力不足という結論を避けられ、成功すれば「準備もしないでできた」と能力がより際立ちます。
- 意味
- 失敗の言い訳になる不利な条件を自分でつくる方略
- 最初の実験
- バーグラスとジョーンズ(1978)
- 理論的背景
- 帰属理論(割引原理と割増原理)
- 種類
- 獲得的(行動的)と主張的セルフ・ハンディキャッピング
なぜそうするのか
帰属理論では、結果の原因がいくつも考えられるとき、一つひとつの原因の重みは小さく見積もられます(割引原理)。不利な条件があれば、失敗の原因は能力ではなくその条件に向けられます。逆に、不利な条件を乗り越えて成功すれば、能力はより大きく評価されます(割増原理)。つまりセルフ・ハンディキャッピングは、「自分には能力がある」という自己像を守るための保険です。とくに自分の能力への確信が揺らいでいるときに起こりやすいとされます。
バーグラスとジョーンズの実験
「よくできた」と言われた人が、わざわざ成績を下げる薬を選ぶでしょうか。バーグラスとジョーンズ(1978)は、大学生に問題を解かせ、全員に「成績が良かった」と伝えました。一方の群は解ける問題、もう一方の群はほとんど解けない問題に取り組んでいたため、後者はなぜ成功したのか確信が持てませんでした。2回目のテストの前に、成績を高める薬と下げる薬のどちらかを選ばせると、成功の理由に確信が持てない男子学生ほど、成績を下げる薬を多く選びました。次に失敗しても薬のせいにできるようにしたのです。
この研究は、セルフ・ハンディキャッピングが「成功がまぐれだと知られるのではないか」という不安から生じうることを示しました。
獲得的と主張的セルフ・ハンディキャッピング
| 種類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 獲得的(行動的) | 実際に不利な条件をつくる | 勉強の先延ばし、徹夜、練習しない、飲みすぎ |
| 主張的 | 不利な条件があると言う | 「最近体調が悪くて」「昨日は一睡もしていない」 |
どんな結果をもたらすか
- 成績の低下:準備が不十分になるため、実際に結果が悪くなりがちです。
- 悪循環:悪い結果が不安を強め、言い訳がさらに増えます。学習性無力感に似たパターンにつながることもあります。
- 対人関係のコスト:言い訳の多い人は、周囲から誠実さに欠けると見られることがあります。
減らすための工夫
- 結果よりプロセスに目を向ける:点数だけでなく、勉強時間や方法など自分でコントロールできる目標を立てます。
- 能力は伸びるものと考える:失敗を能力の判定ではなく情報ととらえれば、言い訳は必要なくなります。自己効力感も参考にしてください。
- 言い訳に気づく:「失敗したら何と言おうか」と考え始めていたら、それがサインです。
よくある質問
- セルフ・ハンディキャッピングとは?
- 失敗が怖い課題の前に、自分で不利な条件をつくったり主張したりして、失敗をその条件のせいにし、成功すれば能力を際立たせようとする方略です。
- セルフ・ハンディキャッピングの例は?
- 試験前夜にゲームをする、発表準備を先延ばしにする、「体調が悪い」と前もって周りに言っておく、などです。
- 先延ばしとは同じですか?
- 先延ばしはセルフ・ハンディキャッピングのよくある手段ですが、すべての先延ばしが自己像を守るためのものとは限りません。
参考文献
- Berglas, S., & Jones, E. E. (1978). Drug choice as a self-handicapping strategy in response to noncontingent success. Journal of Personality and Social Psychology, 36(4), 405–417. https://doi.org/10.1037/0022-3514.36.4.405
