ストレンジ・シチュエーション法とは
ストレンジ・シチュエーション法(Strange Situation)とは、生後12〜18か月ごろの赤ちゃんが、見知らぬ部屋で養育者といったん離れ、ふたたび会うときにどのようにふるまうかを観察し、愛着(アタッチメント)の質を評価する実験の手続きです。「新奇場面法」と呼ばれることもあります。発達心理学者のメアリー・エインズワースが、ボウルビィの愛着理論を実験で確かめるために考案しました。エインズワースとシルビア・ベル(1970)は、この手続きで1歳児の探索・分離・再会のふるまいを報告しています。
- 意味
- 分離と再会の場面から、赤ちゃんの愛着タイプを評価する実験
- 考案者
- メアリー・エインズワース
- 対象
- おおよそ12〜18か月の赤ちゃんと養育者
- 構成
- 1場面あたり約3分の、8つの場面
実験の流れ
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 母親と赤ちゃんが実験室(プレイルーム)に入る |
| 2 | 母親はいすにすわり、赤ちゃんはおもちゃで遊ぶ |
| 3 | 見知らぬ人が入ってきて母親と話し、赤ちゃんに近づく |
| 4 | 母親が部屋を出て、赤ちゃんは見知らぬ人と残る(1回目の分離) |
| 5 | 母親がもどり、見知らぬ人は出ていく(1回目の再会) |
| 6 | 母親がふたたび出ていき、赤ちゃんはひとりになる |
| 7 | 見知らぬ人が入ってくる |
| 8 | 母親がもどってくる(2回目の再会) |
愛着のタイプ
母親が出ていくときに泣いたかどうかより、大事な場面があるのを知っていますか。エインズワースがとくに注目したのは、分離の場面ではなく、母親がもどってくる再会の場面でした。安定型の赤ちゃんは、母親がもどるとうれしそうに近づいてなぐさめてもらい、すぐにまた遊びにもどります。一方、回避型の赤ちゃんは母親を見ないふりをし、アンビバレント型の赤ちゃんは抱っこを求めながらも怒って、なかなか落ち着きません。
| タイプ | 再会のときのようす |
|---|---|
| Bタイプ 安定型 | 近づいてなぐさめを求め、すぐに落ち着いてまた遊ぶ |
| Aタイプ 回避型 | 母親を避けたり無視したりし、おもちゃに集中する |
| Cタイプ アンビバレント型(抵抗型) | しがみつきながらも怒りを見せ、なかなか落ち着かない |
| Dタイプ 無秩序・無方向型 | 固まるなど、一貫しないふるまい(のちにメインとソロモンが追加) |
日本の研究が示した文化差
日本の研究では、高橋惠子(1986)が札幌で60組の母子にこの手続きをおこないました。安定型の割合(68%)はアメリカとほぼ同じでしたが、不安定型はすべてCタイプ(アンビバレント型)で、Aタイプ(回避型)はひとりもいませんでした。高橋は、当時の日本の赤ちゃんは母親と離れる経験が少なく、この手続きが想定以上の強いストレスになった可能性や、日本の子育ての習慣が影響した可能性を指摘しています。実際、再会の場面で赤ちゃんの反応を待たずにすぐ抱き上げる母親も多かったと報告されています。
このように結果は子育ての文化に左右されるため、一度の観察だけで子どもを判断してはいけません。子どものころの愛着が大人の恋愛にどうつながるかは成人愛着理論、親の子育てのスタイルはバウムリンドの養育スタイルもあわせてご覧ください。
よくある質問
- ストレンジ・シチュエーション法とは?
- 赤ちゃんが見知らぬ部屋で養育者と離れ、ふたたび会う場面を観察して愛着のタイプを評価する、エインズワースの実験手続きです。
- 愛着のタイプにはどんなものがありますか?
- 安定型(B)、回避型(A)、アンビバレント型(C)、そしてのちに加えられた無秩序・無方向型(D)があります。
- 日本ではどんな結果が出ましたか?
- 札幌の研究では、安定型の割合はアメリカと同程度でしたが、回避型がおらず、不安定型はすべてアンビバレント型でした。
参考文献
- Ainsworth, M. D. S., & Bell, S. M. (1970). Attachment, exploration, and separation: Illustrated by the behavior of one-year-olds in a strange situation. Child Development, 41(1), 49–67.
- Takahashi, K. (1986). Examining the strange-situation procedure with Japanese mothers and 12-month-old infants. Developmental Psychology, 22(2), 265–270.
