インポスター症候群とは
インポスター症候群(impostor syndrome)とは、よい成果を上げても、それは自分の能力ではなく運やタイミング、周りの勘違いのおかげだと思い込み、いつか「偽物」だと見破られるのではないかと不安になる経験です。「詐欺師症候群」と訳されることもあります。心理学者のポーリン・クランスとスザンヌ・アイムズが1978年の論文で「インポスター現象(impostor phenomenon)」と名づけました。「症候群」という言葉が広く使われていますが、DSMなどの診断基準にある精神疾患ではありません。
- 意味
- 成功を受け入れられず、見破られることを恐れる経験
- 命名
- クランスとアイムズ(1978)
- 別名
- インポスター現象、詐欺師症候群
- 診断名かどうか
- 正式な精神疾患の診断名ではない
最初の研究
クランスとアイムズは、博士号取得者や大学教員、優秀な学生など、高い業績をもつ150人以上の女性とのカウンセリングを通じて、輝かしい経歴にもかかわらず「自分は本当は賢くない」「周りが自分を過大評価している」と感じている人が多いことに注目しました。その後の研究で、男性にもよく見られることがわかっています。
よく見られる考え方と行動
| 考え方 | 行動 |
|---|---|
| 「今回は運がよかっただけ」 | ほめ言葉を打ち消したり否定したりする |
| 「もうすぐ何もわかっていないとばれる」 | 質問や助けを求めることを避ける |
| 「完璧でなければ失敗だ」 | 過剰に準備する、または先延ばしにする |
| 「みんなは簡単にできているのに」 | 他人と絶えず比べる |
過剰な準備のすえに成功すると「必死に努力したからやっと」と考え、先延ばしのすえに成功すると「運だった」と考えるため、どちらにしても能力を認められない循環が生まれます。先延ばしはセルフ・ハンディキャッピングとも似ています。
研究が示していること
インポスター症候群はどれくらいよくあるのでしょうか。ブラバタら(2020)は、62件の研究(参加者14,161人)をシステマティックレビューしました。報告された有病率は9%から82%と大きな幅がありましたが、これは主に研究ごとに使う尺度や基準値が異なっていたためです。性別や年齢を問わずよく見られ、少数派の人種・民族集団でとくに高い傾向がありました。うつや不安と併存することが多く、仕事への満足度の低さや燃え尽きとも関連していました。
同じレビューでは、インポスター症候群そのものへの治療効果を検証した研究は見つからなかったため、併存するうつや不安に目を向けることが重要だとしています。バーンアウト(燃え尽き症候群)も参考にしてください。
向き合うためのヒント
- 事実を記録する:受けたフィードバックや成し遂げたこと、そこで使った力を書き留めると、「運のおかげ」という解釈への反証になります。
- 名前をつける:「今、インポスターの考えが出ている」と気づくと、感情と事実を切り離しやすくなります。
- 比べる相手を変える:他人の表面ではなく、自分自身の成長と比べます。社会的比較理論が、なぜ上方比較がつらいのかを説明しています。
- 話してみる:同僚や先輩に打ち明けると「自分だけではない」とわかります。不安やうつが強い場合は、専門家に相談しましょう。
よくある質問
- インポスター症候群とは?
- 成果を上げていても自分の能力を認められず、いつか実力がないと見破られることを恐れる経験です。
- インポスター症候群は病気ですか?
- 正式な診断名ではありません。ただし、うつや不安を伴うことが多いため、苦しさが強いときは専門家への相談が役立ちます。
- どれくらいの人が経験しますか?
- 2020年のレビューでは、測定方法によって有病率の推定値は9%から82%まで幅がありました。
参考文献
- Clance, P. R., & Imes, S. A. (1978). The imposter phenomenon in high achieving women: Dynamics and therapeutic intervention. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, 15(3), 241–247. https://doi.org/10.1037/h0086006
- Bravata, D. M., Watts, S. A., Keefer, A. L., Madhusudhan, D. K., Taylor, K. T., Clark, D. M., Nelson, R. S., Cokley, K. O., & Hagg, H. K. (2020). Prevalence, predictors, and treatment of impostor syndrome: A systematic review. Journal of General Internal Medicine, 35(4), 1252–1275. https://doi.org/10.1007/s11606-019-05364-1
