ダニング=クルーガー効果とは
ダニング=クルーガー効果は、能力の低い人が自分を過大評価し、逆に能力の高い人はやや過小評価する傾向を指します。コーネル大学の心理学者デイヴィッド・ダニングと大学院生だったジャスティン・クルーガーが、1999年の論文「Unskilled and Unaware of It(未熟で、そのことに気づいていない)」で報告しました。
中心となる説明は二重の負担です。文法をよく知らない人は文法問題を間違えるだけでなく、自分が間違えたと気づくための知識も持っていません。つまり、能力とメタ認知が一緒に不足しているのです。
- 研究者
- ジャスティン・クルーガー、デイヴィッド・ダニング(コーネル大学、1999年)
- 主な結果
- 成績下位25%の人が自分を上位40%程度と評価
- 説明
- できない人は、できていないことを見抜く力も不足しやすい
- 関連概念
- メタ認知、過信バイアス、インポスター症候群
1999年の実験
研究チームはコーネル大学の学部生にユーモアのセンス、論理的推論、英文法のテストを受けてもらい、自分の成績が仲間の中でどのくらいの位置か推定してもらいました。
- 成績下位25%の学生は実際には平均12パーセンタイルほどでしたが、自分を平均62パーセンタイル程度と見積もりました。
- 上位25%の学生は、自分を実際よりやや低く評価しました。ほかの人も自分と同じくらいできると考えたためです。
- 下位の学生に論理の短いトレーニングをすると、自己評価が正確になりました。力がつくと、それまでの誤りが見えるようになるということです。
ネットのグラフの誤解
「馬鹿の山(完璧だと思い込む山)→絶望の谷→啓蒙の坂→継続の大地」と描かれる有名な曲線は、原論文には出てきません。論文のグラフは、四分位ごとに実際の成績と自己評価を比べた単純な折れ線グラフです。また「初心者ほど一番自信満々」という解釈も誇張で、下位グループも自分を「平均より少し上」と考えていたにすぎません。
ダニング=クルーガー効果は、誰かを見下すためのレッテルではありません。自分がよく知らない分野では誰でもこの効果に陥りうる、というのが研究の本当のメッセージです。
統計的な批判
- 平均への回帰と測定誤差:多くの人が「平均より少し上」と答える傾向と測定のばらつきだけでも、似たグラフができるという指摘があります(Nuhferら、2016)。
- 効果は小さい:GignacとZajenkowski(2020)は知能検査のデータを再分析し、効果の大部分は統計的な見かけで、実際の効果は小さいとしました。
- ダニングの反論:ダニングは、測定を工夫しても下位グループの過大評価は残り、フィードバックを受けにくい分野では特に大きいと反論しています。
自己評価のずれを減らすには
- 具体的なフィードバックをもらう:模試の結果、コードレビュー、添削など、外部の基準と比べましょう。
- 人に説明してみる:説明に詰まったところが、理解できていない部分です。
- 評価基準を先に学ぶ:専門家が何を「良い」とするかを知ると、自己評価が正確になります。
- 予想してから確かめる:テスト前に予想点を書き、結果と比べる習慣をつけましょう。
自己判断をゆがめる別の心理として認知的不協和もあわせて読むと理解が深まります。
よくある質問
- ダニング=クルーガー効果の反対は何ですか?
- 能力の高い人が自分を過小評価する傾向です。インポスター症候群とよく結びつけられますが、厳密には同じ概念ではありません。
- 「馬鹿の山」のグラフは間違いなのですか?
- 原論文のデータではなく、後から作られた一般向けのイラストです。学習中の自信の変化をたとえるには役立ちますが、研究結果そのものではありません。
- ダニング=クルーガー効果は本当にあるのですか?
- 能力の低い人が自分を過大評価する現象自体はくり返し観察されていますが、その大きさや原因が統計的な見かけなのかどうかについては議論が続いています。
参考文献
- Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one’s own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121–1134.
- Dunning, D. (2011). The Dunning–Kruger effect: On being ignorant of one’s own ignorance. Advances in Experimental Social Psychology, 44, 247–296.
- Nuhfer, E., et al. (2016). Random number simulations reveal how random noise affects the measurements and graphical portrayals of self-assessed competency. Numeracy, 9(1), Article 4.
- Gignac, G. E., & Zajenkowski, M. (2020). The Dunning-Kruger effect is (mostly) a statistical artefact. Intelligence, 80, 101449.
- Ehrlinger, J., et al. (2008). Why the unskilled are unaware: Further explorations of (absent) self-insight among the incompetent. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 105(1), 98–121.
