違法収集証拠排除法則とは
違法収集証拠排除法則とは、適法な手続によらずに集めた証拠は、証拠として使うことができないとする刑事訴訟の原則です。日本の刑事訴訟法には明文の規定はありませんが、最高裁昭和53年9月7日判決がこの法則を認めました。
- 日本の根拠
- 判例(最判昭和53年9月7日・刑集32巻6号1672頁)
- 基準
- 令状主義の精神を没却するような重大な違法 + 排除の相当性
- 目的
- 違法捜査の抑制、適正手続と司法の廉潔性の保障
- 関連
- 毒樹の果実(派生証拠)
最高裁が示した基準
この判決は、証拠物の押収手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に、証拠能力が否定されるとしました。つまり、違法があればすぐに排除するのではなく、「違法の重大性」と「排除の相当性」の両方を見る、というのが日本の特徴です。なお、この事件そのものでは、警察官の所持品検査は違法とされたものの、違法の程度は重大とまではいえないとして、覚醒剤の証拠能力は認められました。
押収した物が本当に犯行に使われた凶器だとしても、手続が違法なら捨てなければならないのでしょうか。排除法則は、この問いに「場合によってはそうだ」と答えます。違法に集めた証拠を使えるようにすると、捜査機関が令状なしで押収したり、無理に自白をとったりする動機が生まれてしまうからです。日本では排除される場面がアメリカよりかぎられている、とよく指摘されます。
毒樹の果実
違法な捜査で得た証拠をもとに、さらに見つけ出した派生証拠も排除すべきだという考え方です。「毒のある木の実にも毒がある」というたとえから名前がつきました。
各国との比較
| 国 | 根拠 | 特徴 |
|---|---|---|
| アメリカ | 判例(Weeks 1914、Mapp v. Ohio 1961) | 善意の例外、不可避的発見などの例外が発達 |
| 韓国 | 刑事訴訟法308条の2(2007年改正) | 明文で規定し、判例で例外を認める |
| 日本 | 最高裁昭和53年判決 | 重大な違法と排除の相当性があるときに排除 |
| 中国 | 刑事訴訟法56条 | 拷問などによる供述は排除、物証は補正や説明ができなければ排除 |
あわせて伝聞法則と証拠能力、ミランダ判決、アメリカの刑事訴訟もご覧ください。
よくある質問
- 日本で違法収集証拠排除法則を認めた判例は?
- 最高裁昭和53年9月7日判決です。
- 排除の基準は?
- 令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、違法捜査の抑制の見地から証拠として許容するのが相当でない場合です。
- 毒樹の果実とは?
- 違法な証拠から派生した証拠も排除すべきだという理論です。
参考文献
- 형사소송법 제308조의2(위법수집증거의 배제), 법률 제8496호(2007. 6. 1. 개정, 2008. 1. 1. 시행).
- 대법원 2007. 11. 15. 선고 2007도3061 전원합의체 판결.
- Mapp v. Ohio, 367 U.S. 643 (1961).
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月7日判決, 刑集32巻6号1672頁.
- 《中华人民共和国刑事诉讼法》(2018年修正)第五十六条.
