争点効とは
争点効とは、前訴において当事者が主要な争点として真剣に争い、裁判所がその争点について実質的な判断を示した場合に、同じ争点が問題となる後訴で、その判断に反する主張や判断を許さないとする効力です。1960年代に新堂幸司教授が、アメリカのcollateral estoppelを参考に提唱しました。
- 対象
- 判決理由中の主要な争点についての判断
- 要件
- 主要な争点、真剣な争い、裁判所の実質的判断
- 判例
- 否定(最判昭和44年6月24日)
- アメリカ
- issue preclusionとして承認
既判力とのちがい
既判力は、原則として判決主文に包含されるもの、つまり訴訟物についての判断にしか生じません(民事訴訟法114条1項)。判決理由中で判断された前提問題には既判力が及ばないため、後訴で蒸し返すことができてしまいます。
| 項目 | 既判力 | 争点効 |
|---|---|---|
| 範囲 | 判決主文(訴訟物) | 判決理由中の主要な争点 |
| 根拠 | 民事訴訟法の明文 | 学説(明文なし) |
| 判例 | 当然に承認 | 否定 |
たとえば、売買代金請求訴訟で裁判所が「売買契約は有効」と判断して原告が勝訴しても、それは理由中の判断にすぎません。のちに買主が契約の無効を理由に別訴を起こせば、契約の効力をもう一度争えます。争点効を認めれば、こうした蒸し返しを防げます。
判例の立場
最高裁は昭和44年6月24日判決で争点効を否定しました。ただしその後、実質的に前訴の蒸し返しにあたる後訴は信義則に反し許されないとする判例が積み重ねられ、争点効の考え方の一部は信義則という形で生かされているといえます。司法試験や民事訴訟法の授業でも、既判力の客観的範囲とあわせて必ず取り上げられる論点です。
争点効は、教科書には必ず登場するのに実務では使われない、ちょっと不思議な概念です。それでも学び続けられているのは、「判決理由中の判断をどこまで尊重すべきか」という問題を、既判力・信義則・証明力と比べながら考えさせてくれるからです。
韓国・アメリカとの比較
韓国の大法院も争点効を認めず、確定した関連判決で認定された事実は有力な証拠資料になるとして、証明力の問題として扱います。アメリカではissue preclusion(collateral estoppel)が判例法として確立しており、1979年のパークレーン・ホージャリー事件では前訴の当事者でなかった者も一定の場合に援用できるとされました。
よくある質問
- 争点効と既判力の最大のちがいは?
- 既判力は判決主文にしか及ばないのに対し、争点効は判決理由中の主要な争点の判断にも拘束力を認めようとする理論です。
- 最高裁は争点効を認めていますか?
- 認めていません。ただし信義則によって蒸し返しを封じる判例があります。
参考文献
- 新堂幸司『新民事訴訟法(第6版)』弘文堂, 2019.
- 最高裁判所 昭和44年6月24日 第三小法廷判決(判例時報569号48頁).
- Restatement (Second) of Judgments § 27 (American Law Institute, 1982).
- Parklane Hosiery Co. v. Shore, 439 U.S. 322 (1979).
- 대한민국 「민사소송법」 제216조, 제218조.
- 最高人民法院关于适用《中华人民共和国民事诉讼法》的解释 第九十三条.
