日常活動理論とは
日常活動理論(routine activity theory、ルーティン・アクティビティ理論)とは、動機づけられた犯行者(motivated offender)、適当な標的(suitable target)、有能な監視者の不在(absence of capable guardian)という3つの要素が、同じ時間と場所でそろったときに犯罪が起こると考える犯罪学の理論です。アメリカの社会学者ローレンス・コーエンとマーカス・フェルソンが1979年に『American Sociological Review』で発表しました。「なぜ人は犯罪者になるのか」よりも、「犯罪はいつ、どこで起こるのか」に注目する点が特徴で、犯罪機会論の代表的な理論です。
- 提唱者
- コーエン、フェルソン
- 発表
- 1979年、ASR 44巻4号
- 3要素
- 犯行者、標的、監視者の不在
- 関連
- CPTED(防犯環境設計)、割れ窓理論
犯罪が起こる3つの要素
| 要素 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 動機づけられた犯行者 | 犯罪をする意思と能力のある人 | お金に困っている窃盗犯 |
| 適当な標的 | 価値・可視性・移動しやすさ・近づきやすさ(VIVA)が高い対象 | 目立つ高価なスマートフォン |
| 有能な監視者の不在 | 犯罪を防ぐ人や仕組みがない | 留守の家、人通りのない暗い道 |
なぜ犯罪が増えたのか
1960〜70年代のアメリカでは、経済が豊かになったのに犯罪が大きく増えました。コーエンとフェルソンは、その理由を人々の日常活動の変化に求めました。共働きや単身世帯が増えて昼間の留守宅が多くなり(監視者の不在)、テレビなど軽くて高価な電化製品が広まった(適当な標的)ことで、住宅侵入盗が増えたというのです。
犯行者を変えなくても、犯罪は減らせます。3つの要素のうち1つが欠けるだけで、犯罪は起こりません。鍵をかける、明かりをつける、地域の人が見守る。それだけで機会は消えていきます。日本の「地域安全マップ」づくりや、子どもの見守り活動もこの考え方と重なります。
犯罪の三角形と発展
ジョン・エックはこの理論を犯罪の三角形(問題分析の三角形)に発展させ、犯行者・標的・場所の内側の三角形と、それを管理するハンドラー(犯行者を見守る人)・監視者・場所の管理者の外側の三角形に整理しました。現在では、特殊詐欺やサイバー犯罪のように、オンライン上で犯行者と被害者が出会う状況の説明にも使われています。
批判
犯行者の動機をあらかじめあるものとして扱い、説明しない点や、被害者の生活のしかたを強調するあまり被害者非難につながりかねない点が指摘されています。犯罪の原因を説明する分化的接触理論などとあわせて理解するとよいでしょう。
よくある質問
- 日常活動理論とライフスタイル理論は同じですか?
- よく似ていますがちがいます。ヒンデラングらのライフスタイル理論は個人の生活様式が被害リスクを高めると考え、日常活動理論は3要素の収束に注目します。両者をあわせて「機会理論」と呼ぶこともあります。
- 監視者は警察でなければなりませんか?
- いいえ。近所の人、家族、警備員、防犯カメラなど、犯罪をおさえるすべての人や仕組みが監視者です。
- どんなところで活用されていますか?
- 犯罪の地図分析、状況的犯罪予防、防犯環境設計、パトロールの計画などに使われています。
参考文献
- Cohen, L. E., & Felson, M. (1979). Social change and crime rate trends: A routine activity approach. American Sociological Review, 44(4), 588–608.
- Felson, M., & Eckert, M. (2019). Crime and everyday life (6th ed.). Thousand Oaks, CA: SAGE.
- Clarke, R. V. (Ed.). (1997). Situational crime prevention: Successful case studies (2nd ed.). Guilderland, NY: Harrow and Heston.
