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文化の定義とエリート主義

👥 社会学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ひとことで言うと、文化は「世界で考えられ語られてきた最良のもの」(アーノルド)という狭い意味から「ある社会の生活様式の全体」(タイラー、ウィリアムズ)という広い意味まで定義されてきました。エリート主義は高級文化だけを真の文化とみなし、大衆文化を低く評価する見方です。
目次
  1. 1. 概要
  2. 2. 文化の主な定義
  3. 3. エリート主義的な文化観
  4. 4. エリート主義への批判
  5. 5. 今日の論点
  6. 6. 参考文献

概要

「文化」は日常的な言葉でありながら、定義が最も難しい言葉の一つです。レイモンド・ウィリアムズ(Raymond Williams)は『キーワード辞典』(1976)で、cultureを「英語で最も複雑な二つか三つの語の一つ」と呼びました。ラテン語のcolere(耕す、世話をする)に由来するこの語は、土地を耕すことから人の精神を養うことへ、さらに社会の生活様式全体へと意味を広げてきました。どの定義をとるかで何が「文化」と認められるかが変わり、ここからエリート主義をめぐる論争が生まれます。

文化の主な定義

  • 規範的定義(アーノルド):マシュー・アーノルド(Matthew Arnold)は『教養と無秩序』(1869)で、文化を「世界で考えられ語られてきた最良のもの」を知り、それによって完成を追求する営みとしました。文化は産業化時代の物質主義と無秩序を正す基準でした。
  • 人類学的定義(タイラー):エドワード・タイラー(Edward B. Tylor)は『原始文化』(1871)で、文化を「知識、信仰、芸術、道徳、法律、慣習など、社会の成員として人間が獲得した能力と習慣の複合的総体」と定義しました。あらゆる社会がそれぞれの文化をもつという見方です。
  • ウィリアムズの三つの意味:ウィリアムズは文化を、①知的・精神的・美的な発展の過程、②ある集団や時代の特定の生活様式、③知的・芸術的活動の作品と実践、に整理しました。「文化は平凡なもの」(Culture is ordinary、1958)では、文化が少数者の独占物ではないと強調しました。

エリート主義的な文化観

エリート主義は、高級文化(純粋芸術、古典文学、クラシック音楽)を真の文化とし、その基準を教養ある少数者が守るべきだと考える見方です。F・R・リーヴィス(F. R. Leavis)は『大衆文明と少数者文化』(1930)で、文学の伝統を理解できる少数者が文化の連続性を支え、大衆紙・映画・広告などの大衆文明がそれを脅かすと主張しました。フランクフルト学派の文化産業批判も、大衆文化を規格化された商品とみなす点で似た警戒心を示しました。こうした見方は古典中心の教養教育を擁護する論理とも重なり、ピーターズの自由教育論もエリート主義だと批判されました。

エリート主義への批判

  • カルチュラル・スタディーズ:ウィリアムズやバーミンガム学派は、労働者階級や若者の日常文化も意味ある文化として研究し、サブカルチャー理論につながりました。
  • ガンズの趣味文化論:ハーバート・ガンズ(Herbert J. Gans)は『大衆文化と高級文化』(1974)で、階層や教育水準に応じて複数の趣味文化が共存しており、高級文化だけが優れているとする根拠はないという文化的多元主義を主張しました。
  • ブルデューのディスタンクシオン:ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu)は『ディスタンクシオン』(1979)で、「洗練された趣味」は生まれつきの審美眼ではなく家庭や学校で受け継いだ文化資本の産物であり、趣味の序列が階級区分を正当化すると分析しました。これは文化的再生産論の核心です。

今日の論点

デジタル・プラットフォームやOSMU(ワンソース・マルチユース)によって高級文化と大衆文化の境界はあいまいになりましたが、何が「価値ある文化」かという序列はなお残っています。商業的な文化産業が模倣的な欲望を生む仕組みはジラールの欲望の三角形から、文化の国際的な移動はグローバル化と文化の拡散から考えることができます。

参考文献

  1. Arnold, M. (1869). Culture and Anarchy: An Essay in Political and Social Criticism. London: Smith, Elder & Co.
  2. Tylor, E. B. (1871). Primitive Culture. London: John Murray.
  3. Leavis, F. R. (1930). Mass Civilisation and Minority Culture. Cambridge: Minority Press.
  4. Williams, R. (1958). Culture and Society 1780–1950. London: Chatto & Windus.
  5. Williams, R. (1976). Keywords: A Vocabulary of Culture and Society. London: Fontana.
  6. Gans, H. J. (1974). Popular Culture and High Culture: An Analysis and Evaluation of Taste. New York: Basic Books.
  7. Bourdieu, P. (1979). La Distinction: Critique sociale du jugement. Paris: Éditions de Minuit.

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この記事は2026年10月15日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。