大陪審とは
大陪審(grand jury、グランド・ジュリー)は、検察官が提出する証拠を非公開で聞き、罪を犯したと信じる相当な理由(probable cause)があるかを判断して、起訴状(indictment)を出すかどうかを決める市民の陪審です。法廷で有罪・無罪を決める小陪審(petit jury)より人数が多いので「大」と呼ばれます。
- 役割
- 正式に起訴するかどうかを決める
- 根拠
- 合衆国憲法修正第5条
- 連邦の人数
- 16~23人、12人以上の賛成で起訴
- 特徴
- 非公開、被疑者側の弁護人は出席しない
大陪審と小陪審のちがい
| 項目 | 大陪審 | 小陪審(審理陪審) |
|---|---|---|
| 段階 | 起訴の前 | 公判 |
| 判断すること | 起訴する相当な理由があるか | 合理的な疑いをこえて有罪か |
| 公開 | 非公開 | 公開の法廷 |
| 人数(連邦) | 16~23人 | ふつう12人 |
| 評決 | 12人以上の賛成 | 刑事事件は全員一致 |
憲法と規則
修正第5条は「何人も、大陪審の告発または起訴によらなければ、死刑にあたる罪その他の破廉恥罪について責任を問われない」と定めています。連邦では重罪を起訴するには原則として大陪審をとおす必要があります。連邦刑事訴訟規則第6条が、人数(16~23人)、起訴の評決(12人以上)、秘密保持の義務を定めています。大陪審は証人を召喚する強い調査権ももっています。
大陪審の場では、被疑者の弁護人が反論することはできません。証拠を出すのは検察官だけなので、「大陪審はその気になればハムサンドイッチだって起訴できる」という皮肉まで生まれました。権力をおさえる仕組みであると同時に、検察の道具になりうるという批判です。
州ごとのちがい
連邦最高裁はハータド対カリフォルニア事件(1884年)で、大陪審の条項は修正第14条をとおして州には及ばないと判断しました。そのため多くの州は、大陪審のかわりに検察官の略式起訴状(information)と予備審問で起訴します。全体の流れはアメリカの刑事手続を参照してください。
日本の検察審査会との比較
イギリスでは1933年から1948年にかけて大陪審が事実上廃止されました。日本の検察審査会は、くじで選ばれた市民11人が、検察官が起訴しなかった判断(不起訴処分)が妥当かを審査する制度です。アメリカの大陪審をモデルの一つとして戦後に設けられ、2009年からは「起訴相当」の議決を2回すると強制起訴されるようになりました。起訴するかどうかに市民がかかわるという点で、大陪審と共通しています。
よくある質問
- 大陪審と陪審裁判は同じですか?
- いいえ。大陪審は起訴するかを、小陪審は法廷で有罪かどうかを判断します。
- なぜ非公開なのですか?
- 証人を守り、起訴されなかった人の名誉を守り、逃亡を防ぐためです。
- 日本の裁判員制度とのちがいは?
- 裁判員は公判で有罪・無罪と量刑を裁判官と判断するので、どちらかといえば小陪審に近い役割です。
参考文献
- U.S. Const. amend. V.
- Federal Rules of Criminal Procedure, Rule 6 (The Grand Jury).
- Hurtado v. California, 110 U.S. 516 (1884).
- 検察審査会法(昭和23年法律第147号). e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
