ヘイビアス・コーパスとは
ヘイビアス・コーパス(writ of habeas corpus、人身保護令状)とは、人を拘束している者に対して、被拘束者を裁判所に出頭させ、拘束の理由を示すよう命じる令状です。裁判所が審査して違法な拘束であれば釈放を命じます。ラテン語で「(汝は)身体を持つべし」という意味で、英米法では身体の自由を守るもっとも古い手続的保障として「偉大なる令状(the Great Writ)」とも呼ばれます。
- 性質
- 拘束が適法かどうかの司法審査
- 起源
- イングランドのコモン・ロー、1679年人身保護法
- アメリカ
- 合衆国憲法第1条第9節第2項(停止条項)
- 日本の対応
- 人身保護法(1948年)
歴史
中世イングランドの裁判所の令状から始まり、国王が理由なく人を拘禁することを防ぐために1679年の人身保護法で手続が強化されました。合衆国憲法は「人身保護令状の特権は、反乱または侵略に際して公共の安全上必要とされる場合のほか、停止されない」と定めています。南北戦争中にリンカーン大統領が令状を停止して議論となり、連邦議会は1863年に停止を認める法律を制定しました。
ヘイビアス・コーパスが問うのは「なぜ拘束しているのか」であって、「罪があるのか」ではありません。有罪か無罪かを決める裁判ではなく、拘束そのものが法にかなっているかだけを審査します。だからこそ、裁判も受けられずに拘束されている人にとって最初に必要な仕組みなのです。
アメリカでの使われ方
- 連邦ヘイビアス:州裁判所で有罪が確定した受刑者が、憲法上の権利侵害を理由に連邦裁判所へ救済を求めます(28 U.S.C. § 2254)。1996年のAEDPAで期限と要件がきびしくなりました。
- 入管収容:移民当局に収容された外国人が、収容の適法性を争うときに使われます。
- グアンタナモ:連邦最高裁はブーメディエン対ブッシュ事件(2008年)で、グアンタナモの被収容者にも憲法上の人身保護の特権が及ぶと判断しました。
日本・韓国との比較
| 国 | 制度 | 対象 |
|---|---|---|
| アメリカ | habeas corpus | 刑事・入管・軍事などあらゆる拘束 |
| 日本 | 人身保護法(1948年) | 法律上正当な手続によらない拘束(家族間の子の引渡しで使われた例も多い) |
| 日本 | 勾留理由開示(憲法34条) | 刑事手続での勾留 |
| 韓国 | 人身保護法(2008年施行)、拘束適否審 | 精神医療機関などの収容、刑事手続の拘束 |
日本の人身保護法は、戦後に英米法の考え方をとりいれてつくられた法律で、地方裁判所などに救済を請求できます。刑事手続の全体像はアメリカの刑事手続、権利の一覧は権利章典を参照してください。
よくある質問
- だれが請求できますか?
- 拘束されている本人や、その人のために行動する人が裁判所に請求します。
- 停止することはできますか?
- 合衆国憲法では、反乱や侵略の際に公共の安全上必要な場合に限られます。
- 日本にも同じ制度はありますか?
- 日本には1948年制定の人身保護法があり、似た役割をはたしています。
参考文献
- U.S. Const. art. I, § 9, cl. 2.
- Habeas Corpus Act 1679, 31 Cha. 2 c. 2 (England).
- Boumediene v. Bush, 553 U.S. 723 (2008).
- 인신보호법(법률 제8724호, 2007. 12. 21. 제정, 2008. 6. 22. 시행). 국가법령정보센터 https://www.law.go.kr/
