理論的な土台と初期の論争
フェスティンガー(1957年)の認知的不協和理論によれば、人は互いに矛盾する考えを同時にもつと不快を感じ、それを減らそうとします。そのため、すでに下した決定やもっている信念に合う情報は探し、不快を大きくする情報は避けるというのです。しかしシアーズとフリードマン(1967年)は当時の実験結果を検討し、人々は必ずしも反対の情報を避けるわけではなく、情報の有用性や教育水準といった他の要因のほうが重要でありうると批判しました。この批判の後しばらく研究は減りましたが、フライ(1986年)は、決定を取り消せないときや自分の立場を強く支持しているときのように、特定の条件で選択的接触がはっきり現れると整理しました。
実証的根拠と党派的メディア
ハートら(2009年)は、91の研究、約8,000人のデータを総合したメタ分析で、人々は自分の考えに合う情報を、そうでない情報よりも二倍近く多く選ぶ傾向があると報告しました。この傾向はそのテーマへの関与が高いほど強くなり、反対の情報が実際に役立つときには弱まりました。政治の領域では、ストラウド(2008年)が、保守的な人は保守寄りのメディアを、リベラルな人はリベラル寄りのメディアをより多く利用することを示しました。アイエンガーとハーン(2009年)は、同じ記事でもフォックスニュース、CNNなどどのメディア名がついているかによって、回答者の選択が党派性に応じて大きく変わるという実験結果を報告しました。
エコーチェンバー論争
インターネットとソーシャルメディアが広がるにつれ、人々が自分と同じ意見だけを聞く「エコーチェンバー」や、アルゴリズムが個人向けの情報だけを見せる「フィルターバブル」に閉じ込められるという懸念が高まりました。しかしギャレット(2009年)は、オンラインのニュース利用者は自分の意見を支持する情報をより多く探しはするものの、反対の情報を積極的に避けるわけではないという結果を報告しました。つまり「支持する情報を探すこと」と「反対の情報を避けること」は異なる現象だというのです。選択的接触は確証バイアスと密接に関係しており、メディア効果は既存の態度を変えるよりも強化することが多いという説明の根拠となってきました。研究者たちは、情報環境が多様になったぶん、個人の選択とプラットフォームの設計がともに影響を与えると考えています。
よくある質問
- 選択的接触を簡単に言うと?
- 人々が自分の考えに合うニュースや情報は探して見るのに、考えと異なる情報はあまり見ようとしない傾向です。そのため、すでにもっている考えがいっそう固まりやすくなります。
- 選択的接触と確証バイアスはどう違いますか?
- 選択的接触はどの情報を探し、触れるかに関するもので、確証バイアスは情報を探し、解釈し、記憶する過程全体で既存の考えを支持する方向に偏る、より広い概念です。選択的接触は確証バイアスの一つの形とみることができます。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford, CA: Stanford University Press. 選択的接触の理論的な土台である認知的不協和理論の原典で、人々がなぜ自分に合う情報ばかり探すのかを理解するときに参考になります。
- Sears, D. O., & Freedman, J. L. (1967). Selective exposure to information: A critical review. Public Opinion Quarterly, 31(2), 194–213. 初期の実験結果が一貫していないと指摘した批判的レビューで、選択的接触の概念がたどった論争を見るのに参考になります。
- Frey, D. (1986). Recent research on selective exposure to information. Advances in Experimental Social Psychology, 19, 41–80. 選択的接触がいつ強まり弱まるかの条件を整理したレビューで、影響要因を理解するのに役立ちます。
- Hart, W., Albarracín, D., Eagly, A. H., Brechan, I., Lindberg, M. J., & Merrill, L. (2009). Feeling validated versus being correct: A meta-analysis of selective exposure to information. Psychological Bulletin, 135(4), 555–588. 91の研究を総合し、確証的な情報選択が実際に存在することを示したメタ分析で、効果の大きさを確かめるのに参考になります。
- Stroud, N. J. (2008). Media use and political predispositions: Revisiting the concept of selective exposure. Political Behavior, 30(3), 341–366. 政治的傾向によって新聞・放送・インターネットの利用が異なるという研究で、政治的なメディア利用を理解するのに役立ちます。
- Iyengar, S., & Hahn, K. S. (2009). Red media, blue media: Evidence of ideological selectivity in media use. Journal of Communication, 59(1), 19–39. 同じ記事でもメディア名によって選択が変わることを実験で示した研究で、党派的な選択の実際を見るのに参考になります。
- Garrett, R. K. (2009). Echo chambers online?: Politically motivated selective exposure among Internet news users. Journal of Computer-Mediated Communication, 14(2), 265–285. 人々は自分に合う情報を探すが反対の情報を積極的に避けるわけではないという結果で、エコーチェンバー論争を理解するのに役立ちます。
