歴史
1962年、スタンレー・シャクターとジェローム・シンガーは、情動は「身体の興奮+その原因の解釈」で生まれるという二要因説を唱えました。1974年、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のドナルド・ダットンとアーサー・アロンはこれを恋愛に当てはめます。渓谷の約70m上で揺れるキャピラノ吊り橋と、低く頑丈な橋を渡った男性に女性の調査員がアンケートを頼み電話番号を渡すと、吊り橋側では18人中9人、頑丈な橋側では16人中2人が電話をかけてきました。物語課題での性的な表現も吊り橋側で多くなりました。
なぜ起こるのか
動悸や速い呼吸といった興奮反応は恐怖でもときめきでも似ているため、人は周囲の手がかりから原因を推測します。そのとき橋の危険より目の前の人が目立つと、「この人のせいでどきどきしている」と帰属してしまいます。これを「興奮の誤帰属」と呼びます。同じ原理で、ホラー映画や絶叫マシン、運動直後の出会いが好意を高めるという研究が続き、アロンは後に、新しく刺激的な活動を一緒にするカップルは関係満足度が高まることを示しました。
限界
1981年のホワイトらの実験では、相手が魅力的なときは興奮が好意を高めましたが、魅力的でないときはかえって嫌悪感が強まりました。1998年のメタ分析はおおむね効果を支持したものの、興奮の原因がはっきりしていると効果は弱まり、元の実験は標本が小さく再現性の議論もあります。吊り橋効果は、ない魅力を生むというより、すでにある感情を膨らませる「増幅器」に近いといえます。長続きする関係には親密さとコミットメントのほうが大切です。
よくある質問
- 吊り橋効果は恋愛で本当に効く?
- すでにある程度の好意があればときめきを強められますが、ない魅力をつくり出すことはできません。
- ホラー映画デートも同じ原理?
- はい。恐怖による興奮を隣の人へのときめきと解釈し得るという同じ原理です。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Dutton, D. G., & Aron, A. P. (1974). Some evidence for heightened sexual attraction under conditions of high anxiety. Journal of Personality and Social Psychology, 30(4), 510–517.
- Schachter, S., & Singer, J. (1962). Cognitive, social, and physiological determinants of emotional state. Psychological Review, 69(5), 379–399.
- Foster, C. A., Witcher, B. S., Campbell, W. K., & Green, J. D. (1998). Arousal and attraction: Evidence for automatic and controlled processes. Journal of Personality and Social Psychology, 74(1), 86–101.
