歴史
1993年、心理学者エレイン・ハットフィールド、ジョン・カシオポ、リチャード・ラプソンは、人が相手の表情や口調、姿勢を自動的にまね、その結果感情まで似てくるという研究をまとめ「情動伝染」と名づけました。赤ちゃんが他の赤ちゃんの泣き声につられて泣く現象はずっと以前から知られ、19世紀の群集心理研究者も群衆に感情が広がる様子を記録しています。
仕組みと研究
相手が笑うと私たちの口角もわずかに上がり、その筋肉の動きが脳に信号を送って実際の感情を生むというのが顔面フィードバック説です。2008年、ファウラーとクリスタキスは約5000人を20年追跡し、幸せな友人が近くにいると自分も幸せになりやすいと報告しました。2014年にはFacebookが約69万人のニュースフィードの感情的な投稿の表示を調整した実験を発表し、効果は小さかったものの、同意のない感情操作として倫理的な批判を浴びました。
日常への影響と対処
不機嫌な上司一人がチームの空気を変え、怒りを受け止め続けるコールセンター職員は感情労働やバーンアウトに陥りやすく、ケアの仕事では共感疲労にもつながります。自分の感情と相手の感情を区別して名前をつけ、少し距離を置いて呼吸を整える習慣が役立ちます。これは感情知能の中核でもあります。
よくある質問
- 情動伝染と共感は同じ?
- 情動伝染は自動的に感情がうつること、共感は相手の感情を理解しつつ自分の感情と区別する、より意識的な過程です。
- SNSでも感情はうつる?
- 2014年のFacebook実験などで、小さいながら測定可能な効果が報告されています。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Hatfield, E., Cacioppo, J. T., & Rapson, R. L. (1993). Emotional contagion. Current Directions in Psychological Science, 2(3), 96–100.
- Kramer, A. D. I., Guillory, J. E., & Hancock, J. T. (2014). Experimental evidence of massive-scale emotional contagion through social networks. PNAS, 111(24), 8788–8790.
- Fowler, J. H., & Christakis, N. A. (2008). Dynamic spread of happiness in a large social network. BMJ, 337, a2338.
