予言と偶然の発見
1948年、ジョージ・ガモフのもとで研究していたラルフ・アルファーとロバート・ハーマンは、ビッグバンが本当なら初期の熱い宇宙の光が冷えて約5Kの放射として残っているはずだと予言しましたが、論文はすぐに忘れられました。1964年、米ベル研究所のアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンは、ニュージャージー州のホーンアンテナでどの方向に向けても消えない雑音に悩まされていました。巣を作ったハトを追い出し、彼らが「白い誘電物質」と呼んだハトのふんまで拭き取っても雑音は消えません。すぐ近くのプリンストン大学ではロバート・ディッケのチームがまさにこの放射を探す準備中で、知らせを聞いたディッケは「先を越された」と言ったと伝えられます。ペンジアスとウィルソンは1978年のノーベル物理学賞を受けました。
宇宙の赤ちゃん写真
ビッグバン直後の宇宙は熱すぎて、光は自由電子にぶつかり続けて進めませんでした。約38万年後、温度が3000K程度に下がって電子と陽子が水素原子になると光はまっすぐ進めるようになり(宇宙の晴れ上がり)、その後の膨張で波長が約1100倍に伸びてマイクロ波になりました。1989年打ち上げのCOBE衛星は、この光が2.725Kの完全な黒体放射であり、10万分の1ほどのわずかな温度ゆらぎがあることを示し、ジョン・マザーとジョージ・スムートが2006年にノーベル賞を受けました。この小さなゆらぎが重力で成長し、銀河や銀河団の種になりました。昔のアナログテレビの砂嵐の約1%もこの放射です。
精密宇宙論の時代
2001年のWMAP、2009年の欧州のプランク衛星は、温度ゆらぎの地図をはるかに精密に描きました。プランクの2018年の結果では、宇宙の年齢は約138億年で、宇宙のエネルギーのうち通常の物質は約5%、暗黒物質が約27%、超新星の観測で初めて明らかになったダークエネルギーが約68%です。ただしCMBから求めた膨張率(ハッブル定数約67)と近くの星や超新星で測った値(約73)が食い違う「ハッブル・テンション」は、ハッブルの法則研究の最大の難問として残っています。
| 観測ミッション | 期間 | 主な成果 |
|---|---|---|
| COBE(米国) | 1989–1993 | 黒体スペクトルの確認、ゆらぎの初検出 |
| WMAP(米国) | 2001–2010 | 宇宙年齢・組成の精密化 |
| プランク(欧州) | 2009–2013 | 最も精密な全天地図 |
よくある質問
- 宇宙背景放射は目で見えますか?
- マイクロ波なので目には見えません。ただ、昔のアナログテレビの砂嵐の一部はこの放射によるものでした。
- CMBがビッグバンの証拠とされるのはなぜですか?
- 空のあらゆる方向からほぼ同じ温度の完全な黒体放射が届くことは、かつて宇宙全体が熱く均一だったことを意味し、定常宇宙論などの対立理論では説明が難しいからです。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Penzias, A. A., & Wilson, R. W. (1965). A measurement of excess antenna temperature at 4080 Mc/s. Astrophysical Journal, 142, 419–421.
- Mather, J. C., et al. (1990). A preliminary measurement of the cosmic microwave background spectrum by the COBE satellite. Astrophysical Journal Letters, 354, L37–L40.
- Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics, 641, A6.
