発見に関わった人々
ハッブルの法則の土台は何人もの研究者が築きました。1912年、ハーバード天文台の「計算手」だったヘンリエッタ・スワン・リービットは、セファイド変光星の変光周期が本当の明るさと比例することを発見し、遠い距離を測る物差しをつくりました。同じころヴェスト・スライファーは、多くの「渦巻星雲」の光が赤い側にずれる赤方偏移を測っています。1927年、ベルギーの司祭で物理学者のジョルジュ・ルメートルは一般相対性理論から膨張する宇宙を導き、距離と速度が比例する関係をフランス語の論文で先に発表しました。1929年、米ウィルソン山天文台のエドウィン・ハッブルはセファイドで測った銀河の距離とスライファーの速度をグラフにし、この比例関係を観測で示し、法則は長く彼の名で呼ばれてきました。国際天文学連合は2018年の投票で「ハッブル–ルメートルの法則」と呼ぶことを推奨しています。
何を意味するのか
法則はv = H₀ × dと表され、比例定数H₀をハッブル定数といいます。H₀が70なら、約326万光年(1メガパーセク)先の銀河は秒速70km、その10倍遠い銀河は秒速700kmで遠ざかります。これは私たちが宇宙の中心にいるからではなく、レーズンパンがふくらむとすべてのレーズンの間隔が広がるように、空間そのものが膨張しているためです。時間を逆にたどればすべてが一点に集まるのでビッグバン理論の出発点となり、1/H₀はおおよその宇宙年齢(約140億年)を教えてくれます。静的な宇宙のために宇宙定数を加えていたアインシュタインは、ハッブルの発見後にそれを「生涯最大の失敗」と呼んだと伝えられます。
ハッブル・テンション
1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡の重要な任務も、H₀を精密に測ることでした。ところが現在、セファイドとIa型超新星で近くの宇宙を測った値(アダム・リースらの約73)と、宇宙マイクロ波背景放射から初期宇宙をもとに計算した値(プランク衛星の約67)が誤差を超えて食い違っています。測定の問題なのか、初期ダークエネルギーや暗黒物質の新たな性質といった新しい物理の兆しなのか、まだ結論は出ていません。2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡もこの問題を検証しています。
よくある質問
- 宇宙が膨張すると地球と太陽の距離も広がりますか?
- いいえ。太陽系や天の川銀河のように重力で結びついた天体はほとんど影響を受けず、膨張が現れるのは銀河団どうしのような非常に大きなスケールだけです。
- 光より速く遠ざかる銀河はありますか?
- はい。非常に遠い銀河は空間の膨張により見かけの後退速度が光速を超えます。物体が空間の中を光より速く動くのではなく空間自体が伸びているので、相対性理論とは矛盾しません。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Hubble, E. (1929). A relation between distance and radial velocity among extra-galactic nebulae. PNAS, 15(3), 168–173.
- Lemaître, G. (1927). Un Univers homogène de masse constante et de rayon croissant. Annales de la Société Scientifique de Bruxelles, A47, 49–59.
- Riess, A. G., et al. (2022). A comprehensive measurement of the local value of the Hubble constant. Astrophysical Journal Letters, 934, L7.
