ラーナーの実験と理論
ラーナーとシモンズ(1966年)は、女性の参加者に、別の女性が学習課題で間違えるたびに電気ショックを受けているように見える場面を見せました。被害者は実際にはショックを受けていない実験協力者でした。参加者が被害者の苦痛を止める手段をもたないとき、被害者をより否定的に評価する傾向が現れました。被害者を助けられるときには、こうした蔑みは減りました。ラーナー(1980年)は『公正世界信念:根本的な妄想』で、人は世界が公正だという信念を守るために、不当な苦しみを目撃すると被害者を助けるか、それができなければ被害者がそうした目にあって当然だったと解釈し直すのだと説明しました。ラーナーとミラー(1978年)は、この過程が帰属理論とどう結びつくかを整理しています。この傾向は、状況よりも個人の性質を原因と見る基本的な帰属の誤りともかみ合っています。
測定と理論の発展
ルービンとペプロー(1975年)は、公正世界信念を個人差として測定する尺度をつくり、この信念が強い人ほど権威主義的な態度が強く、貧しい人や被害者に同情しにくい傾向があると報告しました。ファーナム(2003年)は、その後の10年あまりの研究を検討しています。ダルバート(1999年)は、「世界は私にとって公正だ」という個人的な信念と、「世界は一般に公正だ」という一般的な信念を区別しました。そして、個人的な信念は主観的な幸福感とより関わり、一般的な信念は厳しい社会的態度とより関わることが確かめられました。ベーグとバストゥニス(2003年)も、この二次元モデルを複数の国のデータで支持しています。ヘイファー(2000年)は、罪のない被害者の話が公正に関わる単語への注意を高めることを修正版ストループ課題で示し、この信念が実際に脅かされていることの証拠を示しました。ヘイファーとベーグ(2005年)は実験研究を総合し、方法論上の問題と今後の課題を整理しています。
社会的な帰結と再分配の政治
公正世界信念は、不平等を正当化するという社会的な帰結を生むことがあります。ジョストとバナージ(1994年)のシステム正当化理論は、人は既存の社会体制を正当なものと見なそうとする動機をもち、不利な立場の集団でさえそうした信念を内面化しうると考えました。経済学でもこの概念が用いられています。アレシナとアンジェレトス(2005年)は、努力が成功を決めると信じる社会は低い税と少ない再分配を選び、運が重要だと信じる社会は多くの再分配を選ぶという、異なる均衡が生じうると分析しました。ベナブーとティロール(2006年)は、人々は動機づけのために公正世界信念を保とうとし、それがアメリカとヨーロッパの再分配政策の違いを説明しうると主張しています。このように公正世界仮説は、個人の心理から社会政策にまで及ぶ概念です。他人と比べて感じる相対的剥奪の研究とあわせて論じられることもあります。
よくある質問
- 公正世界仮説を簡単に言うと?
- 世界は公平で、善い人はうまくいき、悪い人は罰を受けると信じたい気持ちのことです。この信念のせいで、理不尽な目にあった人を見ると「何か悪いことをしたのだろう」と考える被害者非難が生じることがあります。
- 公正世界信念は悪いものでしかないのですか?
- そうではありません。世界は自分にとって公正だという個人的な信念は、将来を計画して努力することを助け、幸福感とも関わっています。ただし一般的な信念が強いと、被害者や貧しい人を責める態度につながることがあります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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- Lerner, M. J., & Miller, D. T. (1978). Just world research and the attribution process: Looking back and ahead. Psychological Bulletin, 85(5), 1030–1051.
- Lerner, M. J. (1980). The Belief in a Just World: A Fundamental Delusion. New York: Plenum.
- Jost, J. T., & Banaji, M. R. (1994). The role of stereotyping in system-justification and the production of false consciousness. British Journal of Social Psychology, 33(1), 1–27.
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