レヴィンの場の理論とは?
場の理論は、ドイツ出身のアメリカの心理学者クルト・レヴィンが物理学の「場(field)」の概念を借りてつくった理論です。人の行動は性格だけでも環境だけでも説明できず、両者がともにつくり出す心理的な場の中で決まると考えました。これをB=f(P, E)、つまり行動(Behavior)は人(Person)と環境(Environment)の関数である、という式で表しています。ゲシュタルト心理学の影響を受け、部分よりも状況全体を重視します。
生活空間と力
レヴィンは、ある人がその時点で知覚している自分と環境の全体を生活空間と呼びました(1936)。生活空間の中では、目標へ引き寄せたり遠ざけたりするさまざまな力がはたらき、その力のバランスによって行動が決まります。過去や未来も、「今ここ」でどう認識されているかを通してのみ行動に影響すると考えました。
力の場の分析と変革の3段階とは?
力の場の分析(フォース・フィールド分析)は、変化を後押しする推進力と、それを妨げる抑止力を書き出して比べる手法です。現状は両者がつり合った「準定常的均衡」であり、変化を起こすには推進力を強めるか抑止力を弱める必要があります。レヴィンは、抑止力を弱めるほうが抵抗が少ないと考えました。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 解凍 | これまでのやり方が通用しないと気づき、変化の必要性を受け入れる |
| 変革(移行) | 新しい行動・制度・価値観を学び、試してみる |
| 再凍結 | 新しいやり方を制度や文化として定着させ、元に戻らないようにする |
この3段階モデルはレヴィンの1947年の論考に基づくとされ、現在も組織変革と抵抗のマネジメントやチェンジマネジメント研修の基本的な枠組みになっています。
リーダーシップの雰囲気に関する実験
レヴィン、リピット、ホワイト(1939)は、子どもたちのクラブ活動で指導者のスタイルを専制型・民主型・放任型に変えて比較しました。専制型では攻撃性や無気力が、放任型では混乱が目立ち、民主型の集団では協力や満足度が比較的高くなりました。この研究はリーダーシップ理論の教科書に欠かせない古典です。
影響と批判
レヴィンは「グループ・ダイナミクス」という分野を切り開き、研究と実践を循環させるアクションリサーチを提唱しました。「よい理論ほど実践的なものはない」という言葉でも知られています。人と環境の相互作用という視点はブロンフェンブレンナーの生態学的システム理論へ、「今ここ」の重視はゲシュタルト療法にも通じます。集団圧力の負の側面は集団浅慮(グループシンク)とあわせて読むとよいでしょう。一方で、位相幾何学の用語が厳密な数学というより比喩に近いこと、概念の測定が難しいことが批判されています。
よくある質問
- B=f(P, E)のEは客観的な環境ですか?
- いいえ。レヴィンのいう環境は、その人が知覚し意味づけた心理的環境です。同じ教室でも生徒によって異なるEになりえます。
- 解凍・変革・再凍結モデルは今でも使われていますか?
- はい。ただし変化が絶えず続く現代の組織には単純すぎるという批判もあり、コッターの8段階モデルなどとあわせて学ばれます。
出典確認日:2026-10-25
参考文献
- Lewin, K. (1936). Principles of Topological Psychology. New York: McGraw-Hill.
- Lewin, K. (1951). Field Theory in Social Science: Selected Theoretical Papers (D. Cartwright, Ed.). New York: Harper & Row.
- Lewin, K., Lippitt, R., & White, R. K. (1939). Patterns of aggressive behavior in experimentally created "social climates." Journal of Social Psychology, 10(2), 271–299.
