光は粒子か波か
1704年、アイザック・ニュートンは『光学』で光を小さな粒子の流れと考え、クリスティアーン・ホイヘンスは波だと主張しました。1801年にトマス・ヤングの二重スリット実験が干渉縞を示し、1860年代にジェームズ・クラーク・マクスウェルが光を電磁波として説明すると、波動説が勝ったかに見えました。しかし1900年、マックス・プランクは熱い物体が出す光のスペクトルを説明するため、エネルギーはhfの整数倍でしかやりとりされないと仮定しました。1905年、アインシュタインはさらに進んで光そのものがエネルギーの粒(光量子)からなると提案して光電効果を説明し、1921年のノーベル賞を受けました。ミリカンはこれを否定しようと実験しましたが、1916年の精密な測定はかえってアインシュタインの式を裏づけました。
「光子」という名前と二重性
1923年、アーサー・コンプトンはX線が電子とぶつかってビリヤードの球のように運動量をやりとりし、波長が長くなることを示し、光の粒が運動量を持つ本当の粒子であることを証明しました。「光子(photon)」という名前は1926年に化学者ギルバート・ルイスがつけたものです。1927年、ポール・ディラックは光の放出と吸収を量子化された場として扱い、量子電磁力学の土台を築きました。光子は1個ずつ送っても、二重スリットを通るうちに積み重なって干渉縞をつくります。観測の仕方によって粒子にも波にも見えるこの性質が「波と粒子の二重性」で、量子力学の核心です。質量がないため真空中では常に秒速約30万kmで進み、この速さが相対性理論の基準になります。
光子を使う技術
原子の中の電子がエネルギー準位の間を飛び降りると決まった色の光子が出て、これを位相をそろえて増幅したのがレーザーです。1956年のハンベリー・ブラウンとトウィスの光子相関実験、1963年のロイ・グラウバーの量子光学の理論(2005年ノーベル賞)が、光を光子単位で扱う道を開きました。1982年、アラン・アスペはもつれた光子対でベルの不等式が破れることを示し、2022年にジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーと共にノーベル賞を受けました。今日、光子は量子暗号通信、デジタルカメラのイメージセンサー、太陽電池、宇宙マイクロ波背景放射の観測に使われています。日本のスーパーカミオカンデも、ニュートリノが生む微弱な光を光電子増倍管で光子単位で捉えています。
よくある質問
- 質量のない光子がなぜエネルギーと運動量を持つの?
- 相対性理論ではエネルギーと運動量は質量なしでも存在できます。光子のエネルギーは振動数に比例し(E=hf)、運動量はエネルギーを光速で割った値です。
- 光子は古くなったり消えたりするの?
- 真空中で光子は崩壊しません。物質に吸収されると消え、宇宙の膨張で波長が伸びてエネルギーが下がることはあります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Newton, I. (1704). Opticks. London: Sam. Smith & Benj. Walford.
- Planck, M. (1901). Über das Gesetz der Energieverteilung im Normalspectrum. Annalen der Physik, 4(3), 553–563.
- Einstein, A. (1905). Über einen die Erzeugung und Verwandlung des Lichtes betreffenden heuristischen Gesichtspunkt. Annalen der Physik, 17, 132–148.
- Millikan, R. A. (1916). A direct photoelectric determination of Planck's "h". Physical Review, 7(3), 355–388.
- Compton, A. H. (1923). A quantum theory of the scattering of X-rays by light elements. Physical Review, 21(5), 483–502.
- Lewis, G. N. (1926). The conservation of photons. Nature, 118(2981), 874–875.
- Dirac, P. A. M. (1927). The quantum theory of the emission and absorption of radiation. Proceedings of the Royal Society A, 114(767), 243–265.
- Hanbury Brown, R., & Twiss, R. Q. (1956). Correlation between photons in two coherent beams of light. Nature, 177(4497), 27–29.
- Glauber, R. J. (1963). Coherent and incoherent states of the radiation field. Physical Review, 131(6), 2766–2788.
- Aspect, A., Grangier, P., & Roger, G. (1982). Experimental realization of Einstein-Podolsky-Rosen-Bohm Gedankenexperiment: A new violation of Bell's inequalities. Physical Review Letters, 49(2), 91–94.
