関係の弁証法理論とは
関係の弁証法理論(relational dialectics theory)とは、親しい関係は、反対の方向を向いた欲求のあいだでたえず引っぱり合いながら続き、変化していくと考えるコミュニケーション理論です。コミュニケーション学者のレスリー・バクスターとバーバラ・モンゴメリーが、1996年の著書『Relating: Dialogues and Dialectics』で体系化しました。
- 意味
- 関係は、反対の欲求のあいだの緊張のなかで動いていくという理論
- 提唱者
- バクスターとモンゴメリー(1996)
- 主な緊張
- 自律と結びつき、開放と閉鎖、予測と新しさ
- 特徴
- 緊張は「解決」するものではなく「やりくり」するもの
3つの代表的な緊張
| 緊張 | ふたりのあいだで | まわりの人との関係で |
|---|---|---|
| 自律と結びつき | ひとりの時間 vs いっしょの時間 | ふたりだけで過ごす vs 友だちや家族とも過ごす |
| 開放と閉鎖 | 何でも話す vs 話さずにおく | 関係をオープンにする vs 内緒にしておく |
| 予測と新しさ | いつもの日常 vs あたらしい刺激 | 世間なみに過ごす vs ふたりらしいやり方を貫く |
仲のいいカップルでも、「ひとりになりたい」と「もっと一緒にいたい」のあいだで揺れるのはなぜでしょうか。バクスターとモンゴメリーは、こうした矛盾は関係がうまくいっていないサインではなく、関係にもともと備わった性質だと考えました。反対の欲求はどちらかが勝って消えるのではなく、ずっと共存しつづけ、そのあいだを行き来する会話こそが関係をつくっていく、というのです。
日本語でよく言う「ちょうどいい距離感」も、まさにこの自律と結びつきのバランスのことだと言えます。
緊張とのつきあい方
| 方法 | 例 |
|---|---|
| 交互に満たす | 平日はそれぞれの生活、週末はふたりで |
| 領域を分ける | 仕事の話はしないが、趣味は共有する |
| 片方だけを選ぶ | いつも一緒にいる(緊張がたまりやすい) |
| とらえ直す | 「ひとりの時間があるから、一緒の時間がもっと大切になる」 |
研究者たちは、どちらか一方だけを選ぶより、両方の欲求を認めるやり方のほうが関係の満足につながりやすいと考えています。
家族の場面では
思春期の子どもの「ほっといて」と「でも気にかけてほしい」も、自律と結びつきの緊張です。家族のなかの近さと柔軟さのバランスをあつかうオルソンの円環モデルや、自己開示が深まっていく過程を説明する社会的浸透理論とくらべてみると理解が深まります。社会的浸透理論が関係を一方向に深まっていくものと見るのに対し、関係の弁証法理論は行ったり来たりしながら揺れ動くものと見る点がちがいです。
よくある質問
- 関係の弁証法理論とは?
- 親しい関係が、自律と結びつきのような反対の欲求のあいだの緊張のなかで続き、変化していくと考える理論です。
- 3つの緊張とは何ですか?
- 自律と結びつき、開放と閉鎖、予測可能性と新しさです。
- 緊張はなくすべきですか?
- いいえ。緊張は関係の自然な一部なので、なくすよりも会話を通してバランスをとっていくことが大切です。
参考文献
- Baxter, L. A., & Montgomery, B. M. (1996). Relating: Dialogues and dialectics. Guilford Press.
