不確実性減少理論とは
不確実性減少理論(uncertainty reduction theory)とは、初対面の人どうしが、相手の行動を予測したり説明したりできるように、会話を通じて情報を集め、不確実性を少しずつ減らしていくと考える理論です。コミュニケーション学者のチャールズ・バーガーとリチャード・カラブレーゼが、1975年に学術誌『Human Communication Research』の創刊号に載った論文で示しました。
- 意味
- 初対面で、会話を通じて相手についての不確実性を減らしていくという理論
- 提唱者
- バーガーとカラブレーゼ(1975)
- 形式
- 7つの公理と、そこから導かれる定理
- 主な変数
- 会話の量、非言語的な温かさ、情報探索、自己開示、返報性、類似性、好意
7つの公理
バーガーとカラブレーゼは、理論を数学のように公理(axiom)の形でまとめました。要点をやさしく言いかえると、次のようになります。
| 変数 | 不確実性との関係 |
|---|---|
| 会話の量 | 会話が増えるほど、不確実性は減る |
| 非言語的な温かさ | ほほえみやアイコンタクトなど温かい表現が増えるほど、不確実性は減る |
| 情報探索(質問) | 不確実性が大きいほど、質問が増える |
| 自己開示の親密さ | 不確実性が大きいほど、立ち入った話は少ない |
| 返報性 | 不確実性が大きいほど、同じくらいの内容を返し合おうとする |
| 類似性 | お互いが似ているほど、不確実性は減る |
| 好意 | 不確実性が減るほど、好意は高まる |
情報はどうやって集めるのか
新学期の初日、となりの席の人に「どこ出身?」とつい聞いてしまうのはなぜでしょうか。バーガーとカラブレーゼは、初対面の会話はたいてい年齢、出身地、専攻といった基本的なプロフィール情報のやりとりから始まり、時間とともに態度や意見のような、より個人的な情報へと移っていくと考えました。相手のことがだんだん予測できるようになるほど会話は気楽になり、関係が次の段階へと進んでいきます。
日本の初対面の場面で、名刺交換や「ご出身は?」「お仕事は?」といった定番のやりとりから入るのも、相手を予測しやすくするための工夫と見ることができます。その後バーガーは、情報を得る方法を、相手をそっと観察する受動的方略、まわりの人にたずねる能動的方略、本人と直接話してたずねる相互作用的方略の3つに分けて説明しました。
発展と批判
- コミュニケーション学者のウィリアム・グディカンストは、この考え方を異文化の出会いに当てはめ、不安・不確実性管理(AUM)理論へと発展させました。留学や海外生活で感じる戸惑いを説明するときによく使われます。
- 一方で、人はいつも不確実性を減らそうとするわけではなく、また会う見込みがあるときや、相手から得られる報酬があるときに、より積極的に情報を求めるという批判や補足もあります。
- 初対面のあと、自己開示によって関係が深まっていく過程は社会的浸透理論が、自分が知っている自分と他人が知っている自分のちがいはジョハリの窓が、それぞれ説明してくれます。
よくある質問
- 不確実性減少理論とは?
- 初対面の人どうしが、会話や質問を通じて相手の情報を得て、不確実性を減らしていくと説明する理論です。1975年にバーガーとカラブレーゼが示しました。
- 公理はいくつありますか?
- 最初の論文では、会話の量、非言語的な温かさ、情報探索、自己開示、返報性、類似性、好意にかかわる7つの公理が示されました。
- 情報探索の方略にはどんなものがありますか?
- 観察する受動的方略、まわりの人にたずねる能動的方略、本人と直接話す相互作用的方略があります。
参考文献
- Berger, C. R., & Calabrese, R. J. (1975). Some explorations in initial interaction and beyond: Toward a developmental theory of interpersonal communication. Human Communication Research, 1(2), 99–112.
