アクティブリスニング(積極的傾聴)とは
アクティブリスニング(active listening)は、日本では積極的傾聴とも呼ばれ、相手の話を最後まで聴き、言葉にこめられた気持ちや意味を理解したうえで、「こういうことですね」とその理解を相手に返していく聴き方です。黙って聞いているだけの「受け身の聞き方」とは違い、聴き手が理解を確かめ、言葉にして伝える能動的なプロセスです。来談者中心療法を生んだカール・ロジャーズとリチャード・ファーソンが、1957年に同じ題名の文章でこの言葉を広めました。
- 意味
- 気持ちと意味を理解し、その理解を返す聴き方
- 提唱
- ロジャーズとファーソン(1957)
- ルーツ
- ロジャーズの来談者中心療法
- 主な技法
- くり返し、感情の反映、要約、開かれた質問
ロジャーズの3つの条件
ロジャーズ(1957)は、人が変わっていくために必要なカウンセラーの態度として次の3つを挙げました。日本では「傾聴の3原則」としてもよく紹介されます。アクティブリスニングは、この態度を会話の技術に落とし込んだものといえます。
| 態度 | 意味 |
|---|---|
| 共感的理解 | 相手の立場に立ち、その人の気持ちや考えを内側から感じとるように理解する |
| 無条件の肯定的関心(受容) | 評価や判断をせず、その人をありのままに尊重する |
| 自己一致(純粋性) | うわべを取りつくろわず、率直な態度で向き合う |
主な技法
| 技法 | 例 |
|---|---|
| くり返し(言い換え) | 「課題が3つも重なったんだね」 |
| 感情の反映 | 「締め切りが重なって、かなりしんどかったね」 |
| 要約 | 「まとめると、時間が足りないのもつらいけど、それ以上にメンバーと連絡がとれないのが心配なんだね」 |
| 開かれた質問 | 「そのとき、どんな気持ちだった?」 |
反対に、助言、説教、評価、安易ななぐさめ(「そんなのみんな経験するよ」)は、相手が話すのをやめてしまう「会話の障害物」になりがちです。
家庭に広まったアクティブリスニング
アクティブリスニングは、どのようにして親教育の基本になったのでしょうか。ロジャーズのもとで学んだ心理学者トマス・ゴードンは、1970年の『親業(Parent Effectiveness Training:P.E.T.)』で、子どもが問題を抱えているときは、親が解決策を与えるより先にアクティブリスニングで子どもの気持ちを受けとめ、親が問題を抱えているときは「わたしメッセージ」で自分の気持ちを伝えるよう提案しました。この区別は、その後の多くの親向け・教師向けプログラムに影響を与えました。
わたしメッセージはアサーション・トレーニングとも深く関わっています。夫婦の会話で非難と防衛がくり返されるときは、ゴットマンの「4つの危険要因」も参考にしてください。
日本の暮らしの中での例
- 子どもが「塾に行きたくない」と言ったとき:「行きたくないんだね。今日、何かあった?」と、まず気持ちを受けとめます。いきなり「でも行かなきゃだめでしょ」と返すと、会話はそこで終わってしまいます。
- 部下が「このスケジュールは厳しいです」と言ったとき:「日程がきついと感じているんですね。どこがいちばん心配ですか?」。職場では、上司が部下の話を聴くことはメンタルヘルス対策の「ラインによるケア」の基本としても重視されています。
- 傾聴ボランティアや福祉の現場:高齢者の話し相手になる傾聴ボランティアや、介護・看護・相談の仕事でも、アクティブリスニングは基本の技術として学ばれています。
よくある質問
- アクティブリスニング(積極的傾聴)とは?
- 相手の言葉にこめられた気持ちや意味を理解し、くり返しや要約によってその理解を相手に返していく聴き方です。
- 傾聴の3原則とは何ですか?
- ロジャーズが示した、共感的理解、無条件の肯定的関心(受容)、自己一致(純粋性)の3つの態度のことです。
- アクティブリスニングとわたしメッセージの違いは?
- ゴードンの考え方では、相手が問題を抱えているときはアクティブリスニングで聴き、自分が問題を抱えているときはわたしメッセージで自分の気持ちを伝えます。
参考文献
- Rogers, C. R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21(2), 95–103. https://doi.org/10.1037/h0045357
- Rogers, C. R., & Farson, R. E. (1957). Active listening. Industrial Relations Center, University of Chicago.
- Gordon, T. (1970). Parent effectiveness training. Wyden.
