アサーションとは
アサーション(assertion)とは、自分も相手も大切にしながら、自分の考えや気持ち、要望を率直に伝える自己表現のことです。がまんして黙り込むのでも、相手を責めるのでもない「第三の伝え方」を身につけるための練習をアサーション・トレーニングといいます。
- 始まり
- 行動療法家ジョセフ・ウォルピ(1958)
- 普及
- アルベルティとエモンズ『Your Perfect Right』(1970)
- 日本での普及
- 平木典子『アサーション・トレーニング』(1993)
- 主な技法
- DESC法、ロールプレイ、壊れたレコード法
歴史と日本での広がり
行動療法家のウォルピ(1958)は、不安の強い人が自分の気持ちを表現する練習をすると不安が下がることに注目し、「主張反応」を治療に用いました。その後アルベルティとエモンズ(1970)が、誰もが自分を表現する権利をもつと説いて一般に広めました。日本では臨床心理学者の平木典子が1980年代からアサーションを紹介し、著書『アサーション・トレーニング―さわやかな〈自己表現〉のために』(1993)をきっかけに、企業研修や学校教育、看護の現場に広がりました。
3つの自己表現のタイプ
| タイプ | 特徴 | 例(友だちがまた約束に遅れたとき) |
|---|---|---|
| 非主張的(ノン・アサーティブ) | がまんする、遠回しに言う | 「ううん、大丈夫…」(内心はイライラ) |
| 攻撃的(アグレッシブ) | 相手を責める、押しつける | 「いつもそう。本当に自分勝手だよね」 |
| アサーティブ | 事実・気持ち・要望を率直に伝える | 「30分待って悲しかったな。次から遅れるときは連絡してくれる?」 |
DESC法
バウアーとバウアー(1976)が提案したDESC法は、アサーティブに伝える手順を4つのステップにまとめたものです。
- D(Describe:描写) 事実を客観的に述べる。「今週、会議資料を当日に受け取ったのが3回ありました」
- E(Express:表現) 自分の気持ちを伝える。「準備の時間がとれず、とても焦りました」
- S(Specify:提案) 具体的にお願いする。「次からは前日の午後までに送っていただけますか」
- C(Choose:選択) 相手の反応に応じた次の行動を考える。「そうすれば、しっかり目を通せます」
自分を主語にして伝えるアイメッセージと組み合わせると効果的です。
効果に関する研究
「断れない性格」は練習で変えられます。アサーションは生まれつきの性格ではなく、短い言い回しをロールプレイでくり返し練習することで身につくスキルです。
スピードら(2018)は、アサーション・トレーニングを、社交不安やうつ、対人関係の問題に効果が示されている「忘れられたエビデンスに基づく治療」と評価しています。現在は認知行動療法の社会的スキル訓練の一部として行われることも多くあります。
日常での練習方法
- 小さな場面から始める。注文と違う料理が出てきたときに伝えるなど、負担の少ない場面で練習します。
- 短く断る。「すみません、今回は難しいです」で十分です。長い言い訳はいりません。
- 壊れたレコード法。しつこく頼まれたら、同じ言葉を落ち着いてくり返します。
- 非言語も意識する。視線、声の大きさ、姿勢も言葉と同じくらい大切です。
よくある質問
- アサーションとはどういう意味ですか?
- 自分も相手も大切にしながら、自分の考えや気持ち、要望を率直に伝える自己表現のことです。
- アサーティブと攻撃的の違いは何ですか?
- 攻撃的な表現は相手を責めますが、アサーティブな表現は事実と気持ち、具体的な要望を伝えながら相手の権利も尊重します。
- DESC法とは何ですか?
- 描写(D)、表現(E)、提案(S)、選択(C)の4ステップで伝えるアサーションの方法です。
参考文献
- Wolpe, J. (1958). Psychotherapy by Reciprocal Inhibition. Stanford, CA: Stanford University Press.
- Alberti, R. E., & Emmons, M. L. (1970). Your Perfect Right: A Guide to Assertive Behavior. San Luis Obispo, CA: Impact.
- Bower, S. A., & Bower, G. H. (1976). Asserting Yourself: A Practical Guide for Positive Change. Reading, MA: Addison-Wesley.
- Speed, B. C., Goldstein, B. L., & Goldfried, M. R. (2018). Assertiveness training: A forgotten evidence-based treatment. Clinical Psychology: Science and Practice, 25(1), e12216.
