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自己統制理論

👥 社会学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
自己統制理論とは、犯罪や非行の最も重要な原因を個人の低い自己統制に求める犯罪学の理論で、「犯罪の一般理論」とも呼ばれます。1990年にマイケル・ゴットフレッドソンとトラビス・ハーシが提示しました。自己統制は子ども時代の親のしつけを通じて、おおむね8〜10歳ごろまでに形成され、その後は比較的安定して保たれると考えます。低い自己統制をもつ人が犯罪の機会に出会うと犯罪をしやすい、というのが理論の核心です。
目次
  1. 1. 理論の核心
  2. 2. 自己統制の形成
  3. 3. 実証研究と批判
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

理論の核心

ゴットフレッドソンとハーシ(1990年)は、犯罪を「自己の利益のために力やごまかしを用いる行為」と定義し、ほとんどの犯罪は即座の満足をもたらし、計画や技術をほとんど必要としないと考えました。そのため、長期的な結果よりも目先の利益を追う人ほど犯罪をしやすいというのです。彼らは低い自己統制の特徴として、衝動性、簡単で単純な課題の好み、危険の追求、知的活動より身体的活動の好み、自己中心性、怒りっぽさを挙げました。ハーシは以前に社会的な絆を重視する社会的統制理論を提示しましたが、自己統制理論は統制を個人内部の安定した傾向へと移したものといえます。ハーシとゴットフレッドソン(1983年)は、年齢による犯罪曲線が社会や時代を超えて似ていると主張し、この理論の土台を築きました。

自己統制の形成

この理論によれば、自己統制は生まれつきのものではなく、子ども時代のしつけによってつくられます。親が子どもの行動を見守り、問題行動に気づき、一貫して正すときに自己統制が育つというのです。いったん形成された自己統制の個人差は生涯を通じて比較的安定しているため、犯罪だけでなく喫煙、過度の飲酒、事故、無計画な消費といった類似の行動もあわせて説明できると考えます。モフィットら(2011年)は1,000人を32年間追跡し、子ども時代の自己統制の水準が成人期の健康、財産、犯罪記録を予測するという結果を報告し、自己統制の幅広い重要性を示しました。

実証研究と批判

グラスミックら(1993年)は自己統制を測定する尺度を開発し、その後の多くの研究で使われるようにしました。プラットとカレン(2000年)はメタ分析によって、低い自己統制が犯罪や逸脱の最も強い予測因子の一つであるという結果を示し、ヴァゾニーら(2017年)のメタ分析も、この関係が多くの国で一貫して見られると報告しました。ただしプラットとカレンは、社会的学習の変数の影響もあわせて確認しました。エイカーズ(1991年)は、低い自己統制を犯罪行動で測定すると理論が同語反復になりうると批判しました。また、自己統制が本当に子ども時代以降変わらないのか、仲間や学校といったその後の環境や緊張の役割を過小評価していないか、という論争も続いています。

よくある質問

自己統制理論を簡単に言うと?
衝動を抑えて長期的な結果を考える力、つまり自己統制が弱い人が犯罪の機会に出会うと犯罪をしやすい、という理論です。この力は主に子ども時代の親のしつけを通じて育つと考えます。
自己統制理論への主な批判は何ですか?
低い自己統制を犯罪行動で測ると「犯罪をする人が犯罪をする」という同語反復になりうる、という批判があります。また、自己統制が子ども時代以降も変化しうることを示す研究も出ています。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Gottfredson, M. R., & Hirschi, T. (1990). A General Theory of Crime. Stanford, CA: Stanford University Press. 自己統制理論を初めて体系化した原典で、理論の基本的な前提と低い自己統制の特徴を直接確かめるときに参考になります。
  2. Hirschi, T., & Gottfredson, M. (1983). Age and the explanation of crime. American Journal of Sociology, 89(3), 552–584. 年齢による犯罪曲線がどこでも似ているという主張を収めた論文で、理論の出発点を理解するのに参考になります。
  3. Akers, R. L. (1991). Self-control as a general theory of crime. Journal of Quantitative Criminology, 7(2), 201–211. 自己統制理論は同語反復だという代表的な批判を含んでおり、理論の弱点を検討するのに役立ちます。
  4. Grasmick, H. G., Tittle, C. R., Bursik, R. J., Jr., & Arneklev, B. J. (1993). Testing the core empirical implications of Gottfredson and Hirschi's general theory of crime. Journal of Research in Crime and Delinquency, 30(1), 5–29. 自己統制を測る「グラスミック尺度」をつくった研究で、概念がどのように測定されるかを知りたいときに参考になります。
  5. Pratt, T. C., & Cullen, F. T. (2000). The empirical status of Gottfredson and Hirschi's general theory of crime: A meta-analysis. Criminology, 38(3), 931–964. 多くの研究を総合し、自己統制が犯罪の強い予測因子であることを示したメタ分析で、実証的根拠を確かめるのに役立ちます。
  6. Moffitt, T. E., Arseneault, L., Belsky, D., Dickson, N., Hancox, R. J., Harrington, H., Houts, R., Poulton, R., Roberts, B. W., Ross, S., Sears, M. R., Thomson, W. M., & Caspi, A. (2011). A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(7), 2693–2698. 子ども時代の自己統制が成人期の健康・財産・犯罪を予測するという縦断研究で、犯罪を超えた意味を見るのに参考になります。
  7. Vazsonyi, A. T., Mikuška, J., & Kelley, E. L. (2017). It's time: A meta-analysis on the self-control-deviance link. Journal of Criminal Justice, 48, 48–63. 最近までの研究を改めて総合したメタ分析で、自己統制と逸脱の関係が今も保たれているかを見るのに役立ちます。

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。