意味
複雑系は単に込み入っているだけではありません。要素が非線形に相互作用するため、部分を足し合わせてもシステムの振る舞いは予測できません。生態系、脳、市場、都市、インターネットがその例です。1984年に設立されたサンタフェ研究所は、物理学、生物学、経済学にまたがる学際的研究を先導しました。
主要概念
- 創発:1匹のアリは単純でも、コロニーは複雑な道筋をつくります。
- 自己組織化:中央の統制なしに、秩序が下から形成されます。
- 非線形性と初期値鋭敏性:小さな違いが大きな結果を生みうる「バタフライ効果」(Lorenz, 1963)。
- 経路依存性:初期の偶然の選択がその後の経路を固定します(QWERTY配列、ネットワーク効果)。
- 複雑適応系:エージェントが学習・適応し、システムそのものを変えます(Holland)。
- カオスの縁:秩序と無秩序の間で適応力が最大になるとされます。
社会科学への応用
- シェリングの分居モデル:近隣に対する穏やかな選好だけで、はっきりした居住分離が生じます。
- エージェント・ベース・モデル:意見の拡散、感染症、市場バブルをシミュレートします。
- 行政学:政策の不確実性、ガバナンス・ネットワーク、組織変革。
一般システム理論が均衡と恒常性を重視したのに対し、複雑系理論は非均衡、変化、予測不可能性を重視します。
限界
その概念はゆるやかな比喩として使われやすく、社会現象について検証可能な予測を導くことは難しいとされます。
参考文献
- Waldrop, M. M. (1992). Complexity: The Emerging Science at the Edge of Order and Chaos. Simon & Schuster.
- Holland, J. H. (1995). Hidden Order: How Adaptation Builds Complexity. Addison-Wesley.
- Schelling, T. C. (1971). Dynamic models of segregation. Journal of Mathematical Sociology, 1(2), 143-186.
- Mitchell, M. (2009). Complexity: A Guided Tour. Oxford University Press.
- Lorenz, E. N. (1963). Deterministic nonperiodic flow. Journal of the Atmospheric Sciences, 20(2), 130-141.