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ムーアの法則

⚙️ 工学・技術 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ムーアの法則とは、半導体チップ1枚に集積されるトランジスタ数がおよそ2年ごとに倍増するという経験的な観察・予測で、インテル共同創業者ゴードン・ムーアが最初に示しました。
目次
  1. 1. 1965年の予測と1975年の修正
  2. 2. なぜ長く続いたのか
  3. 3. 減速と「ムーア後」
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

1965年の予測と1975年の修正

フェアチャイルド・セミコンダクターの研究責任者だったゴードン・ムーアは、1965年に雑誌『エレクトロニクス』に寄せた短い記事で、部品あたりのコストが最も低い集積回路の部品数がほぼ毎年倍増しており、少なくとも10年は続くと予測しました。1975年にはこのペースを「2年ごとに倍増」に修正しています。よく引用される「18か月」は、ムーアではなくインテルの同僚デイビッド・ハウスがトランジスタ数と速度向上を合わせて性能の伸びを述べたことに由来するとされます。「ムーアの法則」と名付けたのはカーバー・ミードで、物理法則ではなく技術の発展傾向に関する観察です。

なぜ長く続いたのか

長く続いた背景にはデナード・スケーリングがあります。ロバート・デナードら(1974年)は、トランジスタを小さくすると電圧と電流も下げられ、単位面積あたりの電力密度が一定に保たれることを示し、チップは小さく、速く、省電力にもなりました。業界は国際半導体技術ロードマップ(ITRS)でこのペースを共通目標としたため、ムーアの法則は予測であると同時に自己実現的な予言の役割も果たしました。経済学者ノードハウス(2007年)は計算コストが数十年にわたり毎年劇的に下がったことを測定し、ジョルゲンソン(2001年)はそれを1990年代の米国の生産性上昇の主要因と分析しました。安価な計算能力は人工知能やプラットフォーム経済の土台となりました。

減速と「ムーア後」

2000年代半ばにはリーク電流と発熱でデナード・スケーリングが崩れ、クロック周波数の向上が止まり、業界はマルチコアへ舵を切りました。エスマイルザデら(2011年)は、電力制約のためにチップの大部分を同時に動かせない「ダークシリコン」問題を指摘しました。微細化が原子レベルに近づくとコストも急増し、『ネイチャー』(2016年)は業界ロードマップがもはやムーアの法則を目標にしなくなったと報じました。ブルームら(2020年)は、この傾向を維持するのに必要な研究者数が1970年代の数十倍に増えたとして、「アイデアは見つけにくくなっている」事例に挙げました。ライザーソンら(2020年)は今後の性能向上がソフトウェアの最適化、アルゴリズム、専用ハードウェアといった「上の層」から生まれると論じ、トンプソンとスパヌート(2021年)は汎用コンピュータから専用チップへの移行を分析しています。

よくある質問

ムーアの法則はもう終わったのですか?
定義によります。トランジスタ密度は今も増えていますが、ペースは落ちコストは上がっており、クロック速度と電力効率の古典的な恩恵は2000年代半ば以降大きく弱まったという点でおおむね一致しています。
ムーアの法則は18か月ですか、2年ですか?
ムーア自身の1975年の修正は2年です。18か月は同僚が性能向上のペースを説明した言葉から広まった数字です。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Moore, G. E. (1965). Cramming more components onto integrated circuits. Electronics, 38(8), 114–117.
  2. Moore, G. E. (1975). Progress in digital integrated electronics. In IEEE International Electron Devices Meeting Technical Digest (pp. 11–13).
  3. Dennard, R. H., Gaensslen, F. H., Yu, H.-N., Rideout, V. L., Bassous, E., & LeBlanc, A. R. (1974). Design of ion-implanted MOSFET's with very small physical dimensions. IEEE Journal of Solid-State Circuits, 9(5), 256–268.
  4. Mack, C. A. (2011). Fifty years of Moore's law. IEEE Transactions on Semiconductor Manufacturing, 24(2), 202–207.
  5. Nordhaus, W. D. (2007). Two centuries of productivity growth in computing. Journal of Economic History, 67(1), 128–159.
  6. Jorgenson, D. W. (2001). Information technology and the U.S. economy. American Economic Review, 91(1), 1–32.
  7. Esmaeilzadeh, H., Blem, E., St. Amant, R., Sankaralingam, K., & Burger, D. (2011). Dark silicon and the end of multicore scaling. In Proceedings of ISCA 2011 (pp. 365–376).
  8. Waldrop, M. M. (2016). The chips are down for Moore's law. Nature, 530(7589), 144–147.
  9. Leiserson, C. E., Thompson, N. C., Emer, J. S., et al. (2020). There's plenty of room at the top: What will drive computer performance after Moore's law? Science, 368(6495), eaam9744.
  10. Bloom, N., Jones, C. I., Van Reenen, J., & Webb, M. (2020). Are ideas getting harder to find? American Economic Review, 110(4), 1104–1144.
  11. Thompson, N. C., & Spanuth, S. (2021). The decline of computers as a general purpose technology. Communications of the ACM, 64(3), 64–72.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。