偶然の発見からトランジスタへ
1833年、マイケル・ファラデーは硫化銀が温度が上がるほど電気をよく通すという、金属とは逆の性質を記録しました。1874年、ドイツのカール・フェルディナント・ブラウンは一部の金属硫化物が一方向にしか電流を流さない「整流作用」を発見し、これは初期のラジオの鉱石検波器に使われました。その理由は量子力学の登場を待たねばならず、1931年にアラン・ウィルソンがバンド理論で半導体を説明しました。1947年12月、ベル研究所のジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンがゲルマニウムで最初のトランジスタを作り、翌年ウィリアム・ショックレーが接合型トランジスタの理論を示して、3人は1956年にノーベル物理学賞を受けました。1958〜59年にはジャック・キルビーとロバート・ノイスが集積回路を、1959年には韓国出身のダウォン・カーン(姜大元)とモハメド・アタラが今日のチップの基本素子MOSFETを作りました。日本では江崎玲於奈がトンネルダイオードで1973年のノーベル賞を受けています。
バンドギャップとドーピング
電子が電気を運ぶには「伝導帯」に上がる必要があり、そこまでのエネルギーの隔たりをバンドギャップといいます。金属にはなく、絶縁体では大きすぎ、半導体はほどよく狭いため、熱や光で一部の電子が飛び移れます。シリコンにリンを少し加えると電子が余るn型、ホウ素を加えると電子の抜け穴(正孔)ができるp型になります。両者を接合したpn接合は電流を一方向にだけ流すダイオードになり、光で電気をつくる太陽電池(1954年ベル研究所)、逆に電気で光るLEDや半導体レーザーにもなります。1990年代に中村修二らが実現した青色LEDは白色LED照明を可能にし、赤﨑勇・天野浩とともに2014年のノーベル賞を受けました。
| 分類 | 電気の通しやすさ | 例 |
|---|---|---|
| 導体 | 非常に通す | 銅、銀、アルミニウム |
| 半導体 | 条件で調節できる | シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム |
| 絶縁体 | ほとんど通さない | ガラス、ゴム、ダイヤモンド |
ムーアの法則と半導体産業
1965年、ゴードン・ムーアは1つのチップに載る部品の数が毎年2倍になると予測し(1975年に2年ごとに修正)、この「ムーアの法則」は半世紀にわたって業界の目標になりました。今日の最先端チップには、爪ほどの面積に数百億個のトランジスタが入っています。半導体は情報を記憶するメモリ(DRAM、NANDフラッシュ)と、演算や制御を担うロジック(CPU、GPU、イメージセンサー)に分かれます。1980年代には日本がDRAMで世界をリードし、その後は韓国が、台湾のTSMCは設計をせず製造だけを請け負うファウンドリーの形を切り開きました。回路が数ナノメートルまで微細化するなか、極端紫外線(EUV)露光装置や希少素材の供給網が国家戦略の問題となり、廃電子機器から金属を取り戻す都市鉱山も注目されています。
よくある質問
- なぜ半導体材料にシリコンが最も多く使われるの?
- シリコンは砂から得られるほど豊富で、バンドギャップがほどよく、表面に良質な酸化膜(SiO₂)を簡単に作れるためMOSFETの製造に向いているからです。
- ムーアの法則は終わったの?
- トランジスタを小さくするペースは2010年代以降大きく鈍りました。代わりに3次元積層、複数チップを組み合わせるパッケージング、新材料などで性能向上を続けています。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Braun, F. (1874). Über die Stromleitung durch Schwefelmetalle. Annalen der Physik und Chemie, 229(12), 556–563.
- Wilson, A. H. (1931). The theory of electronic semi-conductors. Proceedings of the Royal Society A, 133(822), 458–491.
- Bardeen, J., & Brattain, W. H. (1948). The transistor, a semi-conductor triode. Physical Review, 74(2), 230–231.
- Shockley, W. (1949). The theory of p-n junctions in semiconductors and p-n junction transistors. Bell System Technical Journal, 28(3), 435–489.
- Chapin, D. M., Fuller, C. S., & Pearson, G. L. (1954). A new silicon p-n junction photocell for converting solar radiation into electrical power. Journal of Applied Physics, 25(5), 676–677.
- Kilby, J. S. (1964). Miniaturized electronic circuits. U.S. Patent No. 3,138,743.
- Moore, G. E. (1965). Cramming more components onto integrated circuits. Electronics, 38(8), 114–117.
- Nakamura, S., Mukai, T., & Senoh, M. (1994). Candela-class high-brightness InGaN/AlGaN double-heterostructure blue-light-emitting diodes. Applied Physics Letters, 64(13), 1687–1689.
- Sze, S. M., & Ng, K. K. (2007). Physics of Semiconductor Devices (3rd ed.). Hoboken, NJ: Wiley.
