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サイバネティクス

🔬 自然科学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
サイバネティクスとは、生物・機械・組織が情報をやり取りし、フィードバックによって目標状態を維持・調節するしくみを共通の原理として研究する学問で、1948年にノーバート・ウィーナーが命名しました。
目次
  1. 1. 誕生:ウィーナーとメイシー会議
  2. 2. 中心概念:フィードバックと必要多様性
  3. 3. 二次サイバネティクスと遺産
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

誕生:ウィーナーとメイシー会議

サイバネティクスという言葉は「舵取り」を意味するギリシャ語に由来します。数学者ノーバート・ウィーナーは第二次世界大戦中に対空砲の照準装置を研究し、パイロットの動きを予測して誤差を補正する過程が人間の意図的な行動に似ていることに気づきました。ローゼンブルース、ウィーナー、ビゲローの論文「行動・目的・目的論」(1943年)は目的志向の行動を負のフィードバックで説明し、同年マカロックとピッツはニューロンを論理回路としてモデル化しました。1946〜1953年のメイシー会議には数学者・生理学者・人類学者マーガレット・ミードやグレゴリー・ベイトソンらが集い、ウィーナーは1948年に『サイバネティクス:動物と機械における制御と通信』を刊行しました。同じ年にシャノンの情報理論も登場し、情報の概念が定着していきました。

中心概念:フィードバックと必要多様性

中心となる概念はフィードバックです。サーモスタットのように出力と目標の差を縮める負のフィードバックは体温維持のようなホメオスタシスを、差を広げる正のフィードバックは暴走や急激な変化を説明します。精神科医ロス・アシュビーは『サイバネティクス入門』(1956年)で、システムを安定して制御するには制御装置が外乱と同じだけ多様な反応を持たなければならないという「必要多様性の法則」を示しました。スタフォード・ビアはこれを組織に応用した「実行可能システムモデル」をつくり、1970年代初頭にはチリのサイバーシン計画で国家経済の管理実験にも関わりました。これらの考えは一般システム理論と互いに影響し合いました。

二次サイバネティクスと遺産

1970年代、ハインツ・フォン・フェルスターは観察対象だけでなく観察者自身もシステムの一部だとする「二次サイバネティクス(サイバネティクスのサイバネティクス)」を提唱しました。マトゥラーナとヴァレラのオートポイエーシス、ベイトソンの精神の生態学もこの流れに属します。学問分野としてのサイバネティクスは1970年代以降、制御工学、認知科学、人工知能、複雑系科学などへ分散しましたが、ニューラルネットワーク研究やロボット工学、家族療法や経営学のシステム思考に大きな足跡を残しました。科学史家アンドリュー・ピカリングとロナルド・クラインは、サイバネティクスが冷戦期の科学と文化をどう形づくったかを再検討しています。「サイバー」という接頭辞もここから生まれました。

よくある質問

サイバネティクスと人工知能は同じものですか?
いいえ。一部の源流を共有しますが、サイバネティクスはフィードバックと制御による適応を、初期の人工知能は記号処理と推論を中心に据えました。現代のニューラルネットワーク研究には両方の伝統が溶け込んでいます。
負のフィードバックと正のフィードバックの違いは?
負のフィードバックは目標とのずれを縮めて安定を保ち、正のフィードバックは変化を増幅して成長や暴走を生みます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Wiener, N. (1948). Cybernetics: Or Control and Communication in the Animal and the Machine. Cambridge, MA: MIT Press.
  2. Rosenblueth, A., Wiener, N., & Bigelow, J. (1943). Behavior, purpose and teleology. Philosophy of Science, 10(1), 18–24.
  3. McCulloch, W. S., & Pitts, W. (1943). A logical calculus of the ideas immanent in nervous activity. Bulletin of Mathematical Biophysics, 5(4), 115–133.
  4. Shannon, C. E. (1948). A mathematical theory of communication. Bell System Technical Journal, 27(3), 379–423.
  5. Ashby, W. R. (1956). An Introduction to Cybernetics. London: Chapman & Hall.
  6. Beer, S. (1972). Brain of the Firm. London: Allen Lane.
  7. Bateson, G. (1972). Steps to an Ecology of Mind. San Francisco: Chandler.
  8. von Foerster, H. (1974). Cybernetics of Cybernetics. Urbana: Biological Computer Laboratory, University of Illinois.
  9. Maturana, H. R., & Varela, F. J. (1980). Autopoiesis and Cognition. Dordrecht: Reidel.
  10. Pickering, A. (2010). The Cybernetic Brain: Sketches of Another Future. Chicago: University of Chicago Press.
  11. Kline, R. R. (2015). The Cybernetics Moment. Baltimore: Johns Hopkins University Press.
  12. Medina, E. (2011). Cybernetic Revolutionaries: Technology and Politics in Allende's Chile. Cambridge, MA: MIT Press.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。