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脱工業化社会論

👥 社会学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
脱工業化社会論は、先進社会が製造業が経済と雇用の中心だった工業社会を過ぎ、サービス業が雇用の多数を占め、理論的知識と専門・技術職が社会変動の軸となる「脱工業化社会」へ移行するとする社会変動論です。ダニエル・ベルが1973年の『脱工業社会の到来』で体系化しました。
目次
  1. 1. 産業構造の変化と理論の登場
  2. 2. ダニエル・ベルの脱工業化社会
  3. 3. 実証、批判と継承
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

産業構造の変化と理論の登場

経済の発展につれて労働力が農業から製造業へ、さらにサービス業へ移るという観察は、コーリン・クラーク(1940年)とジャン・フラスティエ(1949年)の「3部門仮説」にまとめられました。1950年代の米国は、サービス業の雇用が製造業と農業を合わせたものより多くなった最初の国となりました。マッハルプ(1962年)は知識の生産と流通の産業が米国の国民総生産の約29%を占めると推計し、ドラッカー(1969年)は「知識労働者」の時代を予告しました。フランスのトゥレーヌ(1969年)はこの新しい社会を、テクノクラートが情報と意思決定を握る「プログラム化社会」とみなし、対立の中心が労使関係からテクノクラートと消費者・学生のような集団の間へ移ると分析しました。

ダニエル・ベルの脱工業化社会

ベル(1973年)は『脱工業社会の到来』で社会を社会構造、政治、文化の3つの領域に分け、脱工業化社会の変化は主に社会構造で起こると考えました。彼は5つの次元を示しました。第一に、経済部門で財の生産からサービス経済へ移り、とりわけ保健、教育、研究、行政のようなサービスが拡大します。第二に、職業構造で専門・技術職階級が際立ちます。第三に、社会の「基軸原理」として理論的知識が革新と政策形成の源泉として中心に立ちます。第四に、技術の計画と制御による未来志向が現れ、第五に、意思決定でシステム分析やゲーム理論のような新しい「知的技術」が重要になります。ベルは、工業社会が人と機械のゲームだったとすれば、脱工業化社会は「人と人とのゲーム」だと表現しました。また大学と研究機関が中核的な制度となり、能力と学歴によるメリトクラシーが強まると考えましたが、これは人的資本理論の視点ともかみ合います。

実証、批判と継承

脱工業化社会論は、サービス雇用の拡大と高学歴化という趨勢をよくとらえました。ボーモル(1967年)は、生産性の向上が遅いサービス業の相対費用が上がり続ける「コスト病」を指摘し、サービス経済の成長鈍化の可能性を提起しました。イングルハート(1977年)は、豊かさの中で育った世代が自己表現と参加を重んじる「脱物質主義」の価値観をもつと分析しました。しかし批判も多くあります。クマー(1995年)とウェブスター(2014年)は、サービス業の多くは製造業を支える仕事であり資本主義的な利潤の論理は変わらないという点で「断絶」は誇張されていると考えました。エスピン=アンデルセン(1993年)は脱工業化の階級構造が福祉国家の類型によって異なって現れることを比較しました。オーターとドーン(2013年)は高技能の専門職と低技能の対人サービス職がともに増え、中間技能の仕事が減る労働市場の二極化を示し、ベルの楽観的な展望とは異なる姿を明らかにしました。ベルの問題意識は、カステル(1996年)のネットワーク社会論や情報社会論、知識基盤経済の議論へと受け継がれました。

よくある質問

脱工業化社会論を簡単に言うと?
工場でものをつくる仕事が中心だった社会が、サービス業と知識、専門職が中心の社会へ変わっていくという理論です。
脱工業化社会論と情報社会論はどんな関係ですか?
ベルが理論的知識の中心性を強調したことを受け継ぎ、情報社会論とカステルのネットワーク社会論は、情報通信技術とネットワークが社会構造を変える過程に注目します。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Bell, D. (1973). The Coming of Post-Industrial Society: A Venture in Social Forecasting. New York: Basic Books.
  2. Touraine, A. (1969). La société post-industrielle. Paris: Denoël.
  3. Clark, C. (1940). The Conditions of Economic Progress. London: Macmillan.
  4. Fourastié, J. (1949). Le grand espoir du XXe siècle. Paris: Presses Universitaires de France.
  5. Drucker, P. F. (1969). The Age of Discontinuity: Guidelines to Our Changing Society. New York: Harper & Row.
  6. Machlup, F. (1962). The Production and Distribution of Knowledge in the United States. Princeton: Princeton University Press.
  7. Baumol, W. J. (1967). Macroeconomics of unbalanced growth: The anatomy of urban crisis. American Economic Review, 57(3), 415–426.
  8. Inglehart, R. (1977). The Silent Revolution: Changing Values and Political Styles among Western Publics. Princeton: Princeton University Press.
  9. Esping-Andersen, G. (Ed.). (1993). Changing Classes: Stratification and Mobility in Post-Industrial Societies. London: Sage.
  10. Castells, M. (1996). The Rise of the Network Society. Oxford: Blackwell.
  11. Kumar, K. (1995). From Post-Industrial to Post-Modern Society: New Theories of the Contemporary World. Oxford: Blackwell.
  12. Autor, D. H., & Dorn, D. (2013). The growth of low-skill service jobs and the polarization of the US labor market. American Economic Review, 103(5), 1553–1597.
  13. Webster, F. (2014). Theories of the Information Society (4th ed.). London: Routledge.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。