きょうだい間の葛藤とは
きょうだい間の葛藤(sibling rivalry)とは、きょうだいが親の関心や愛情、時間、おもちゃなどの限られた資源をめぐって競いあい、嫉妬したり、けんかしたりすることです。多くの家庭で見られる自然な発達の一部で、けんかと仲なおりをくりかえすなかで、子どもは交渉や思いやり、気持ちのコントロールを学んでいきます。アドラーは早くから、生まれ順やきょうだい関係が性格に影響すると考えました。
なぜ起こるのか
- 下の子の誕生:イギリスの発達心理学者ジュディ・ダンとキャロル・ケンドリックは、下の子が生まれた家庭を観察し、多くの上の子に赤ちゃん返り(赤ちゃん言葉、哺乳びんをほしがる)やかんしゃくが見られることを記録しました。
- 親の不公平な扱い:扱いがちがうこと自体よりも、子どもがそれを「ずるい」「不公平だ」と感じたときに関係が悪くなります。大人になってからも影響が残るという研究があります。
- 気質や年齢差:年齢が近く同性のきょうだいほど比べられやすく、葛藤が大きくなりがちです。
- 家族のストレス:夫婦げんかや経済的な苦しさがあると、きょうだいげんかも増えます。
「お兄ちゃんなんだから」の問題
| よくある言葉 | 子どもに伝わる意味 | 言いかえの例 |
|---|---|---|
| 「お兄ちゃんなんだから我慢して」 | ぼくの気持ちは大事じゃない | 「きみも使いたかったんだね。順番を決めようか」 |
| 「妹を見習いなさい」 | いつも比べられている | 「ここ、すごくがんばったね」 |
| 「どっちも悪い!」 | だれも話を聞いてくれない | 「一人ずつ、何があったか教えてくれる?」 |
公平とは、同じだけ分けることではありません。フェイバーとマズリッシュは著書『Siblings Without Rivalry』(1987年)で、一人ひとりの必要にあわせて接し、比べるかわりにその子自身を見るようにすすめました。「どっちが好き?」と聞かれたら、「あなたはあなただから大好き」が答えです。日本では、上の子だけと過ごす「上の子優先」の時間をつくる工夫も広く紹介されています。
親の対応
- 危険がなければ、すぐに審判をせず、子どもたちが自分で解決するのを見守ります。
- 介入するときは、それぞれの気持ちを受けとめ、「たたかない」などのルールははっきり示します。
- 子ども一人ひとりと親が二人きりで過ごす時間をつくります。
- 下の子が生まれる前から上の子に心の準備をさせ、お世話に参加する機会をつくります。
よくある質問
- きょうだいげんかは、どんなときに心配すべきですか?
- いつも一方だけがやられている、けがや強いおびえがくりかえされる場合は、きょうだい間のいじめとして介入や相談が必要です。
- 下の子が生まれてから、上の子が赤ちゃん返りしました。
- よくある反応です。叱るより、上の子だけの時間や愛情を増やすと、たいていおさまっていきます。
- まったく同じに扱わないと不公平ですか?
- いいえ。年齢や必要に応じてちがう対応をしながら、その理由を説明することのほうが大切です。
参考文献
- Dunn, J., & Kendrick, C. (1982). Siblings: Love, envy, and understanding. Cambridge, MA: Harvard University Press.
- Faber, A., & Mazlish, E. (1987). Siblings without rivalry. New York: W. W. Norton.
- Jensen, A. C., Whiteman, S. D., Fingerman, K. L., & Birditt, K. S. (2013). "Life still isn’t fair": Parental differential treatment of young adult siblings. Journal of Marriage and Family, 75(2), 438–452.
