感情コーチングとは
感情コーチング(emotion coaching)とは、子どもが怒りや悲しみ、不安などの気持ちを見せたとき、それを無視したり叱ったりするのではなく、心を通わせるチャンスとして受けとめ、共感し、気持ちに名前をつけ、行動には限度を示しながら、子どもが自分で解決策を見つけられるよう手助けする子育ての方法です。夫婦研究で知られる心理学者ジョン・ゴットマンが、親が感情をどう扱うか(メタ感情)の研究(1996年)から体系化し、1997年の著書『Raising an Emotionally Intelligent Child』(邦訳『0歳から思春期までのEQ教育』など)で広く知られるようになりました。
- 提唱者
- ジョン・ゴットマン
- ポイント
- 気持ちの受容+行動の限度
- 研究の土台
- メタ感情(1996年)
- 関連
- EQ(心の知能指数)、バウムリンドの養育スタイル
4つの親のタイプ
| タイプ | 気持ちへの向きあい方 | 例 |
|---|---|---|
| 感情を軽視する親 | たいしたことないと流す、気をそらす | 「泣かないの。アイス食べる?」 |
| 感情を否定する親 | ネガティブな気持ちを叱る、罰する | 「泣きやみなさい!泣いたら怒るよ」 |
| 自由放任の親 | 気持ちは受けとめるが、行動の限度を示さない | 「怒ってるんだね。じゃあたたいてもいいよ」 |
| 感情コーチの親 | 気持ちには共感し、行動には限度を示す | 「弟にこわされてくやしかったね。でも、たたくのはダメ。どうしたらいいかな?」 |
ゴットマンの研究では、感情コーチングを受けた子どもは気持ちをコントロールする力が高く、友だち関係や学業でもよい結果を示しました。
5つのステップ
- 子どもの気持ちに気づく:小さなサインも見のがさないようにします。
- 気持ちが動いた場面を、心を通わせて教えるチャンスととらえる:めんどうなことではなく、近づくきっかけと考えます。
- 共感しながら聴く:能動的な聞き方で、子どもの気持ちを映しかえします。
- 気持ちに名前をつける:「くやしかったんだね」「がっかりしたね」と、言葉にするのを手伝います。
- 限度を示しながら、自分で解決策を見つけるのを助ける:してはいけない行動をはっきりさせ、ほかの方法をいっしょに考えます。
「どんな気持ちも大丈夫。でも、どんな行動でもいいわけじゃない」感情コーチングは、子どもの言いなりになる方法ではありません。気持ちには扉をひらき、行動には線を引く。その両方がそろったとき、子どもは自分の心とのつきあい方を学んでいきます。イヤイヤ期のかんしゃくも、「困った行動」である前に「言葉にならない気持ち」のあらわれかもしれません。
誤解と限界
感情コーチングは、どんな場面でも使う技術ではありません。親が疲れきっているとき、人前のとき、子どもが危ない行動をしているときは、まず安全を確保し、あとで落ちついて話します。また、親が自分の気持ちを扱う練習もあわせて必要です。オーストラリアのTuning in to Kidsのようなプログラムでは、感情コーチングの親教育が子どもの問題行動を減らしたという研究結果が報告されています。
よくある質問
- 感情コーチングと自由放任のちがいは?
- どちらも気持ちを受けとめますが、感情コーチングは行動にははっきりと限度を示します。
- 何歳からできますか?
- ことばを話す前の赤ちゃんでも、気持ちのサインを読みとって応えることから始められます。
- 夫婦のあいだでも使えますか?
- はい。相手の気持ちに気づいて共感する考え方は、ゴットマンの夫婦研究ともつながっています。
参考文献
- Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.
- Gottman, J., & DeClaire, J. (1997). Raising an emotionally intelligent child: The heart of parenting. New York: Simon & Schuster.
- Havighurst, S. S., Wilson, K. R., Harley, A. E., Prior, M. R., & Kehoe, C. (2010). Tuning in to Kids: Improving emotion socialization practices in parents of preschool children. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 51(12), 1342–1350.
