バートの理論と中心的論理
社会学者ロナルド・バートは『構造的空隙』(1992年)で競争の社会構造を分析しました。自分とつながる2人が互いを知らなければ、その間には「構造的空隙」があり、自分は2人をつなぐ唯一の経路、つまり仲介者になります。バートは仲介者が2つの利点を得ると考えました。異なる集団から重複しない情報をいち早く得る情報の利点と、双方を天秤にかけて有利な条件を引き出せる統制の利点です。後者はゲオルク・ジンメルの「漁夫の利を得る第三者(tertius gaudens)」に由来します。この理論はグラノヴェッターの弱い紐帯の強さを発展させたもので、紐帯の強さよりも、それが空隙をつなぐかどうかが鍵だと強調します。バートは有効規模や制約といった指標を提案し、フリーマン(1977年)の媒介中心性とも密接に関わります。
仲介と閉鎖:ソーシャル・キャピタル論争
ジェームズ・コールマン(1988年)は反対に、メンバーどうしが密につながった閉鎖的ネットワークが信頼と規範を強め、ソーシャル・キャピタルを生むと考えました。バートは『仲介と閉鎖』(2005年)で両者を統合し、集団の外の空隙をつなぐ仲介は新しいアイデアと機会を、集団内部の閉鎖は実行と協力を助けると整理しました。実証面では、バート(2004年)が米国の電子機器企業の管理職のうち構造的空隙をつなぐ人ほど良いアイデアを出し、高い評価と報酬を得ていると報告しました。アフジャ(2000年)は化学産業の協力ネットワークで、構造的空隙が多いほどかえって特許成果が低くなりうることを示し、条件による違いを明らかにしました。
限界と近年の研究
構造的空隙の効果は文脈によって変わります。オブストフェルド(2005年)は、空隙を利用するのではなく互いを知らない人どうしを結びつける「結合する第三者(tertius iungens)」志向がイノベーションへの関与に有利だとし、フレミングら(2007年)は、仲介はアイデアの創出には役立つものの、その実現や普及には不利になりうると論じました。シャオとツイ(2007年)は、集団主義的な文化の強い中国のハイテク企業では仲介者の利点が弱まるか消えると報告しています。アラルとヴァン・アルスタイン(2011年)は、多様な集団とつながるほど各関係を流れる情報量は減るという「多様性と帯域幅のトレードオフ」を示しました。仲介者が情報を独占すると情報の非対称性や信頼の問題が生じうるという指摘もあります。
よくある質問
- 構造的空隙と弱い紐帯はどう違いますか?
- 弱い紐帯は関係の強さに注目し、構造的空隙は関係が分断された集団をつなぐかというネットワーク上の位置に注目します。バートは、弱い紐帯が役立つのは多くの場合それが空隙をつなぐからだと考えました。
- 構造的空隙をつなぐことは常に有利ですか?
- いいえ。文化、産業、課題の性質によって効果は異なり、実行や協力が重要な場面では密な閉鎖型ネットワークの方が有利なこともあります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Burt, R. S. (1992). Structural Holes: The Social Structure of Competition. Cambridge, MA: Harvard University Press.
- Burt, R. S. (2004). Structural holes and good ideas. American Journal of Sociology, 110(2), 349–399.
- Burt, R. S. (2005). Brokerage and Closure: An Introduction to Social Capital. Oxford: Oxford University Press.
- Granovetter, M. S. (1973). The strength of weak ties. American Journal of Sociology, 78(6), 1360–1380.
- Simmel, G. (1908). Soziologie: Untersuchungen über die Formen der Vergesellschaftung. Leipzig: Duncker & Humblot.
- Coleman, J. S. (1988). Social capital in the creation of human capital. American Journal of Sociology, 94, S95–S120.
- Freeman, L. C. (1977). A set of measures of centrality based on betweenness. Sociometry, 40(1), 35–41.
- Ahuja, G. (2000). Collaboration networks, structural holes, and innovation: A longitudinal study. Administrative Science Quarterly, 45(3), 425–455.
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- Fleming, L., Mingo, S., & Chen, D. (2007). Collaborative brokerage, generative creativity, and creative success. Administrative Science Quarterly, 52(3), 443–475.
- Aral, S., & Van Alstyne, M. (2011). The diversity-bandwidth trade-off. American Journal of Sociology, 117(1), 90–171.
- Xiao, Z., & Tsui, A. S. (2007). When brokers may not work: The cultural contingency of social capital in Chinese high-tech firms. Administrative Science Quarterly, 52(1), 1–31.
