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情報の非対称性

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
情報の非対称性とは、取引や契約において一方の当事者が品質・リスク・行動などについて相手より多くの情報をもっている状態で、市場の失敗の代表的な原因として研究されています。
目次
  1. 1. 概念と背景
  2. 2. 逆選択とモラルハザード
  3. 3. 市場の対応と応用
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

概念と背景

古典的な完全競争市場のモデルは、すべての参加者が同じ情報をもつと仮定します。フリードリヒ・ハイエクは1945年に知識が社会に分散していることを強調し、ケネス・アローは1963年に医師と患者の知識の差が医療市場のしくみを変えることを分析しました。1970年、ジョージ・アカロフは、中古車市場で売り手だけが品質を知っていれば買い手は平均的な価格しか払わず、良い車が市場から去って悪い車だけが残るレモン市場になることを示しました。この論文が情報の経済学の出発点となり、アカロフ、マイケル・スペンス、ジョセフ・スティグリッツは2001年にノーベル経済学賞を受賞しています。

逆選択とモラルハザード

情報の非対称性は、タイミングによって二つの問題を生みます。契約前の隠れた特性から生じる逆選択は、リスクの高い人ほど保険に入りたがる現象が典型で、ロスチャイルドとスティグリッツ(1976年)は、保険会社が免責額の異なる商品を示して顧客自身にタイプを明かさせる「スクリーニング」を分析しました。契約後の隠れた行動から生じるモラルハザードは、保険加入後に注意を怠るといった形で現れ、ホルムストローム(1979年)は観察できる情報を報酬に結びつける契約を研究しています。経営者と株主の関係を扱うジェンセンとメックリング(1976年)のエージェンシー理論も同じ流れから生まれました。

市場の対応と応用

情報をもつ側は、学歴・保証・ブランドのようにコストのかかる行動で品質を伝えるシグナルを送り、情報をもたない側は審査や契約設計で相手をふるい分けます。スティグリッツとワイス(1981年)は、銀行が金利を上げると安全な借り手が去ってしまうため、金利ではなく融資そのものを制限する信用割当が起こると説明しました。マイヤーズとマジュルフ(1984年)は、経営者が内部情報をもつため企業は内部資金、負債、新株の順に資金を調達するというペッキング・オーダー理論を示しています。フリマアプリの評価やレビュー、情報開示制度、品質認証などは、情報の非対称性を小さくする仕組みと解釈されます。

よくある質問

逆選択とモラルハザードの違いは?
逆選択は契約前に相手の隠れた特性(健康状態など)がわからないことから生じ、モラルハザードは契約後に相手の隠れた行動(注意の怠りなど)を観察できないことから生じます。
情報の非対称性は完全になくせる?
完全になくすのは難しいとされます。ただし開示義務、保証、評判システム、第三者認証といった制度が情報格差とそれによる非効率を小さくする役割を果たしています。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Hayek, F. A. (1945). The use of knowledge in society. American Economic Review, 35(4), 519–530.
  2. Arrow, K. J. (1963). Uncertainty and the welfare economics of medical care. American Economic Review, 53(5), 941–973.
  3. Akerlof, G. A. (1970). The market for 'lemons': Quality uncertainty and the market mechanism. Quarterly Journal of Economics, 84(3), 488–500.
  4. Spence, M. (1973). Job market signaling. Quarterly Journal of Economics, 87(3), 355–374.
  5. Rothschild, M., & Stiglitz, J. (1976). Equilibrium in competitive insurance markets: An essay on the economics of imperfect information. Quarterly Journal of Economics, 90(4), 629–649.
  6. Jensen, M. C., & Meckling, W. H. (1976). Theory of the firm: Managerial behavior, agency costs and ownership structure. Journal of Financial Economics, 3(4), 305–360.
  7. Holmström, B. (1979). Moral hazard and observability. Bell Journal of Economics, 10(1), 74–91.
  8. Stiglitz, J. E., & Weiss, A. (1981). Credit rationing in markets with imperfect information. American Economic Review, 71(3), 393–410.
  9. Myers, S. C., & Majluf, N. S. (1984). Corporate financing and investment decisions when firms have information that investors do not have. Journal of Financial Economics, 13(2), 187–221.
  10. Stiglitz, J. E. (2002). Information and the change in the paradigm in economics. American Economic Review, 92(3), 460–501.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。