歴史と過剰診断の議論
1909年、スイスの外科医コッハーは甲状腺手術を安全にした功績で外科医として初めてノーベル賞を受けました。1940年代に放射性ヨウ素治療が始まり、1986年のチェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺がんの急増は、放射線被ばくが危険因子であることをはっきり示しました。韓国では1999年以降、健診で超音波が広まり2011年の罹患数は1993年の15倍になりましたが死亡率は変わらず、2014年にアンとウェルチらが過剰診断の典型例として報告しました。一方、日本の隈病院は1993年から微小がんの経過観察を世界に先駆けて実践しています。
種類と症状
乳頭がんが大半で、濾胞がん、遺伝が関わることのある髄様がん、まれですが急速に進む未分化がんがあります。多くは無症状で、超音波で結節(しこり)として見つかります。大きくなると首のしこり、声のかすれ、飲み込みにくさ、リンパ節の腫れが出ることがあります。結節の9割以上は良性で、超音波の形や大きさから穿刺吸引細胞診をするか決めます。甲状腺の働きは通常正常なため、機能低下症や亢進症の血液検査ではわかりません。
治療の選び方
1cm以下で危険な位置にない微小乳頭がんは、手術せず定期的に超音波で見守る積極的経過観察が選択肢として日本のガイドラインにも載っています。手術が必要なら、大きさや転移に応じて片葉切除か全摘を行い、再発リスクが高ければ放射性ヨウ素治療を加えます。全摘後は生涯、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)を飲みます。予後がよいからと放置せず、主治医とリスクに応じた計画を立てましょう。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 手術後は普通に生活できますか?
- 多くの人はホルモン薬を飲みながら普段どおり暮らしています。
- 海藻を食べてはいけませんか?
- 普段の食事は問題なく、放射性ヨウ素治療の前だけヨウ素制限食をします。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Ahn, H. S., Kim, H. J., & Welch, H. G. (2014). Korea's thyroid-cancer "epidemic"—screening and overdiagnosis. NEJM, 371(19), 1765–1767.
- Haugen, B. R., et al. (2016). 2015 American Thyroid Association management guidelines for adult patients with thyroid nodules and differentiated thyroid cancer. Thyroid, 26(1), 1–133.
- Kocher, T. (1909). Nobel Lecture: Concerning pathological manifestations in low-grade thyroid diseases.
