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バラッサ=サミュエルソン効果

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
バラッサ=サミュエルソン効果は、貿易財部門の生産性が急速に高まる国では賃金が上昇し、生産性があまり上がらない非貿易財(サービス)の価格も上がるため全体の物価水準が高くなり、その結果として実質為替レートが増価するという国際経済学の仮説です。1964年にベラ・バラッサとポール・サミュエルソンがそれぞれ提示しました。
目次
  1. 1. 問題提起:なぜ豊かな国は物価が高いのか
  2. 2. 理論の構造
  3. 3. 実証研究と含意
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

問題提起:なぜ豊かな国は物価が高いのか

購買力平価説によれば同じ商品はどの国でも同じ価格になるはずですが、実際には所得の高い国ほど散髪、外食、家賃といったサービスの価格が高く、市場為替レートで換算した全体の物価水準も高くなっています。クラビスとリプシー(1983年)は、各国の物価水準と1人当たり所得の間にはっきりとした正の相関があることを報告しました。ロイ・ハロッド(1933年)が初めてこの現象の原因を生産性の違いに求め、1964年にベラ・バラッサとポール・サミュエルソンがそれぞれ独立に精緻な説明を示しました。そのためこの仮説は「ハロッド=バラッサ=サミュエルソン効果」とも呼ばれます。

理論の構造

経済を、国際的に取引される「貿易財」部門(製造業など)と、国内でのみ消費される「非貿易財」部門(サービスなど)に分けます。貿易財の価格は国際競争によって各国で等しくなり、賃金は労働移動によって両部門で等しくなると仮定します。豊かな国は貿易財部門の生産性が特に高いため賃金が高く、一方で非貿易財部門は生産性の差が小さいので、同じ高い賃金を払うには非貿易財の価格が上がらなければなりません。その結果、全体の物価水準が高くなり、市場為替レートで比較した実質為替レートは増価します。また、貿易財の生産性が速く伸びる国では、時間とともに実質為替レートが増価する傾向が見られます。バグワティ(1984年)は要素賦存の違いに基づく説明もあわせて示し、ボーモルとボーエン(1966年)の「コスト病」、すなわち生産性が停滞したサービス部門の相対価格が上がるボーモル効果は、同じメカニズムを国内の視点から示しています。

実証研究と含意

デ・グレゴリオ、ジョバンニーニ、ウルフ(1994年)は、OECD諸国で貿易財と非貿易財の生産性格差が非貿易財の相対価格の上昇を説明するという証拠を示しました。フルートとロゴフ(1995年)、ロゴフ(1996年)は、この効果が購買力平価からの長期的な乖離の重要な理由の一つであると整理する一方、短期の為替変動はうまく説明できないという限界も指摘しました。エゲルト、ハルペルン、マクドナルド(2006年)は、中東欧の移行経済国でこの効果が実質為替レートの増価に寄与したものの、その大きさは想定より小さいと報告しました。チョン、ジョルダ、テイラー(2012年)は長期のパネル分析でこの仮説を支持する結果を得ています。この効果は、ユーロ圏のような通貨同盟では高成長の加盟国のインフレ率が構造的に高くなりうるという含意を持ち、ロドリック(2008年)の実質為替レートと成長の研究のように、途上国の為替レート評価にも用いられています。

よくある質問

バラッサ=サミュエルソン効果を簡単に言うと?
製造業の生産性が高い豊かな国では賃金が高いため、生産性がどこでもあまり変わらない散髪や外食のようなサービスの価格も高くなり、全体の物価が高くなるという説明です。
購買力平価説とはどのような関係ですか?
各国の物価水準が購買力平価のとおりに等しくならず、所得の高い国ほど体系的に高くなる理由を説明します。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Harrod, R. F. (1933). International Economics. Cambridge: Cambridge University Press.
  2. Balassa, B. (1964). The purchasing-power parity doctrine: A reappraisal. Journal of Political Economy, 72(6), 584–596.
  3. Samuelson, P. A. (1964). Theoretical notes on trade problems. Review of Economics and Statistics, 46(2), 145–154.
  4. Baumol, W. J., & Bowen, W. G. (1966). Performing Arts: The Economic Dilemma. New York: Twentieth Century Fund.
  5. Kravis, I. B., & Lipsey, R. E. (1983). Toward an Explanation of National Price Levels. Princeton Studies in International Finance No. 52. Princeton: Princeton University.
  6. Bhagwati, J. N. (1984). Why are services cheaper in the poor countries? Economic Journal, 94(374), 279–286.
  7. Froot, K. A., & Rogoff, K. (1995). Perspectives on PPP and long-run real exchange rates. In G. Grossman & K. Rogoff (Eds.), Handbook of International Economics (Vol. 3, pp. 1647–1688). Amsterdam: Elsevier.
  8. De Gregorio, J., Giovannini, A., & Wolf, H. C. (1994). International evidence on tradables and nontradables inflation. European Economic Review, 38(6), 1225–1244.
  9. Rogoff, K. (1996). The purchasing power parity puzzle. Journal of Economic Literature, 34(2), 647–668.
  10. Obstfeld, M., & Rogoff, K. (1996). Foundations of International Macroeconomics. Cambridge, MA: MIT Press.
  11. Égert, B., Halpern, L., & MacDonald, R. (2006). Equilibrium exchange rates in transition economies: Taking stock of the issues. Journal of Economic Surveys, 20(2), 257–324.
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  13. Chong, Y., Jordà, Ò., & Taylor, A. M. (2012). The Harrod–Balassa–Samuelson hypothesis: Real exchange rates and their long-run equilibrium. International Economic Review, 53(2), 609–634.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。